この世界は不思議なことで溢れている

天界 聖夜

第1話 世紀末の魔術師との出会い?


 俺は死の淵に立たされている。


 カバンを地面に落とし、生まれったの子鹿みたいにブルブルと震えっている。


「どうしてこんなことに、なったんだろう」

 

 怪物が俺の目の前までやってきて……鋭い爪で首を切り落そうとする。


 殺される。


 助けてくれ。


 死ぬのは 嫌だ。


 どうしてこんなになったかというと少し前のことだ。


 俺こと魔導まどう賢士郎けんしろう』は、翼竜高校に通うごくごく普通の男子高校生だ。 


 悪友の田中たなか今村いまむらと三人で帰るのがいつもの日課だ。


 田中は下ネタが大好きな男子高校生で、今村はバリバリの体育会系の男子生徒だ。


 辺りはもうすっかり暗くなっていった。


 俺たちは陸上部に在籍している。


 部活が終わり、これから帰るところだ。


「ああ、もうクタクタだよ」


「そうだな。

 今日も練習大変だったな」


 中田がボヤき、俺は 軽く相槌をうつ。


「でも汗を掻くって気持ちイイよな」


「そう思っているのは、今村だけだよ」


「まったくだな」


 俺も同意の声を上げる。


 いつもと変わらない日常が続くものだと俺は思っていた。


 だかこの一言から俺たちの運命は大きく変わることになる。


 本当に……ほのたわいもない……一言から……。


「げっ!? もう20時だよ! 

 あ~ちゃんの話が長かったからな」


 今村が声を上げた。


 あ~ちゃんとは、顧問のあだ名で、本名は相川あわかわみちるだ。 

 小柄で可愛らしい先生だ。


「もうそんな時間かよっ! 

 早く家に帰らないと、母ちゃんが心配しちゃうよ」


 続いて田中が声を上げる。


「あまり知られいないけど、この路地裏を通るのが近く道なんだぜ」


 再び今村が声を上げる


「路地裏とか、何かワクワクするな」


「ああ、そうだな」


 俺の叫びに田中が同意の声を上げた。 


 俺たちは人道りの少ない路地裏に入って行く。


 路地裏は予想以上に暗く、狭くって歩きづらかった。


 時折、カラスの鳴き声も聞こえてきた。


 しばらく歩くと、ドカンという爆発音が聞こえ。


 そのあと、かすかに「助けて」という声が聞こえてきた。


 俺の頭の中に直接、響いてくる。


「今、爆発音みたいなのが、しなかったか」


 驚いたように、田中が話かけてくる。


「何か? 事件かもしれないし、やっぱり警察に電話した方が良いよな」


「待て!? 今村、俺が少し様子を見てくるよ」


「危ないよ」


「田中の言う通りだよ。危険だよ。

 何かがあってからじゃ……」


「二人とも心配してくれてありがとう。

 でも、俺は行くよ。

 大丈夫。

 すぐに戻て来るから、安心して二人は待っていて!?」


 二人が止めるのも聞かずに、俺は音がした方え走っていた。


「行っちゃったな、今村」


「ああ、そうだな。

 行っちゃったな」


「ケンシロウ、きっと無事に帰ってくるよな?

 今村……」


「ああ、アイツならきっと帰てくるさあ。

 悪運だけは、昔から強かったからな。

 帰てきたら笑顔で迎えてやろうぜ」


「相変わらず今村は、惚れ惚れするほどカッコイイな」




++++++++++++++++++++++++++++++;




「なに……アレ? 魔導師……」


 少年はゲームやマンガに出てくる魔導師のような格好していて、 歳は15~16といったところかな?


 そして少年はバケモノと戦っていた。


  バケモノと言われても、わからないかもれない。


 でも俺には、それしか……表現できなかった。


 得体のしれない化け物。


 たっだ一つ言えるのは、地球上に存在するの生き物では………ない……ということだけだ。


 この世のモノとも思えないほど、全身から炎が溢れ出し、頭には大きな二本の角が生えている。


 顔こそは人間の男性にているが、背から黒く大きな翼が生えている。


 まるで夢をもているようだった。


「逃げて」


 また、頭に直接響く声が聞こえてきた。


「え、何?」


「早く、こいつは、ボクが食い止めるから。

 早く、逃げて!?

 お願い」


 漆黒のローブは血に染まり、額からは血を流している。


 手に握られていた杖みたいのは折れ、瞳からは力強さを感じない。


 少年は、明らかに死にそうだった。


「そんなことできないよ。キミを見捨てることなんて!?」


「ボクのことは、気にしなくてもいいから……これは、ボクが招いたことだから。

 無関係のキミを巻き込む訳にはいかなよ」


「そんな悲しいことを言わないで、ふたりで戦えば何とかなるよ。

 俺にできることなら何でもするから。

 キミの力になりたいんだよ」


「どうやらキミはかなりのおしとよしで頑固な人間みたいだね。

 なら、ボクにも考えがあるよ。

 協力してくれるかい?」


「ああ、もちろんだ。

 何でも言ってくれ」


「残った魔力で、とっておきのをぶつけてやるよ。

 そのための時間を稼いでくれ」


「ああ。わかった。どのくらい稼げばいいんだ?」


「1分いや30秒あれば十分だ」


「わかった、30秒だな」


 バケモノに向かって石を投げつけ


「バケモノ、お前の相手はコチだ」


 大声で叫ぶと凄まじい咆哮とともに怪物が襲いかかってきた。


 正直言って怯みそうになったが、少年の力になると約束したから、全力で逃げた。


 力の限りに走った。


 今の俺には、それぐらいしかできなかったから。


 バケモノは、予想以上に速かった。


 俺と怪物の距離がみるみるうちに縮まっていく。


 俺は足の速さには自信があったのだが化け物の速さは、尋常ではなかった。


 このままでは、あの怪物に殺されてしまう。

 

 こんなところで死ぬのは嫌だ。


 まだやりたいことがたくさんあるのに、死ぬのは嫌だ!!!

 

 誰か!!! 助けて!?


 すると後ろから大きな爆発音がした。


 慌てて振り向くと、辺りは焼き焦げ。


 緑色の液体を流し、倒れているバケモノが見てとれた。


「こ、これで……お、終わりか?

 い、意外とあけないモノだな」


 俺は……恐る恐る怪物に近づいてみると、バケモノの手足はなくなっていて、体から溢れらしていた炎は消えっていた。


 この化け物は、死んだのだと確信した時。


 声が聞こえってきた。


「そいつは、まだ生きている。

 角を折らない限り、何度でも再生するぞ。

 その場から離れろ」


「えっ、再生?」


 そんなことを話しているうちに、バケモノの手足は再生していった。


 バケモノはゆっくりと立ちあがり、迫ってくるが……俺は恐怖のあまり腰を抜かして、叫ぶこともできず。


 ただその場で、子鹿みたい震えっていることしかできなかった。


 バケモノの鋭く尖った爪が俺の左腕を軽く切り裂き。


 左腕から赤い血が、ぽたぽたと垂れる。


「グギャアアア」


 あまりの痛さに俺は悲鳴を上げる。


 次に軽く右足と左足と、徐々に切り裂いていく。


 まるでヒトの体を切り裂くことを楽しんでいるように思えた。


 まったくイイ趣味してやがるぜ。


 両足をやられて、まともに立つこともできなくなったけど、それでも俺は諦めていなかった。


 残った力で最後の悪あがきとして、バケモノの右足に思いきり噛み付いてやった。


 ぐぅぎゃぁぁああと叫び声を上げ。


 苦しんでいるところを見ると、それなりにダメージをあたえられたようだ。


 バケモノは怒り狂い。


 鋭く尖った爪で俺の首を切り落そうとする。


 本当に殺されると死を覚悟した時。


 突然!? お婆ちゃんの形見の首飾りが強く輝きだし、防御結界を張り、バケモノの攻撃から俺を守ってくれたうえに、傷も治ってしまう。


 そしてお婆ちゃんの声が聞こえってきた。


 頭の中に直接響く声で聞こえてきた。


 それは“翼の民の首飾り” じゃよぉ。


 邪悪な者から身を守り、邪悪な者を滅する力を秘めている。

 

 その首飾りを胸にあて、心に浮かんだ呪文を唱えるのじゃ。


 さすれば魔を滅することができよう。


「うん。わかったよ。お婆ちゃん」


「やってみる」


 俺は首飾りを胸にあて、強く願った。


 魔を滅する力をーーーー少年を救う力をーーーー。


 そして心に浮かんだ言葉は『翼』。


 全ての闇を照らす希望の言葉。


 未来を信じる可能性の言葉。


 大切な人達を守る力の言葉。


 それが『翼』。


「この世界の理からはずれし者よ。

 汝は汝の世界に還るがいい。

 これ以上この世界破壊するなら、それ相応の報いをうけてもらうぞ。

 それでもいいか? バケモノ!!


「グギャアアアア」と物凄い咆哮を上げ、襲いかかってきた。


「忠告はしたぞ、恨むなよ」


 そう叫ぶと背中から青い翼が生え、その羽根一枚一枚が激しく輝き。


 俺は力ある言葉を唱える。


「レスカ・マキナ・ストレ・カレット」


 風の魔法・カマイタチがバケモノの全身を切り裂き。


「グギャアアア」という叫び声とともに、光の粒子となって消え去ってしまう。


 少年は何が起こったのか?  わからなかったのか? うわごとのように……つぶやく。


「今のは……もしかして、魔法なのか?

 バカな……そんなはずはない。

 この世界の人は、魔法が使えないはずだ。

 もし……万が一、この世界の人も魔法が使えたとしても、何の修行もしてない一般人があんな高度な魔法が使えるわけが……イヤ、待ってよ。

 その魔導具……見覚えがあるぞ。

 ど、どこで、それを手に入れたんだ」


「これはお婆ちゃんの形見で、俺の家にだいたい伝わる家宝だ」


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