第2章 序列戦 編

2章 プロローグ 夢

 ──術師団員になって、親に楽をさせたい。


 別段魔力も大きくなければ、特殊な属性や複数属性の魔法を使えるわけでもない。

 そんなごく普通の魔術師として生まれた俺は、いつしかそんな夢を抱いていた。


 きっかけは覚えていない。


 ただ幼い頃から、決して裕福でない親が、3人の子の為に必死で働いている姿を見ていた。

 その頃から、俺の夢は変わらずにこれであった。


 当然バカにもされた。


 お前みたいな凡人が、俺らと同じ土俵で戦えるのかと、諦めた方が身の為だと、散々言われた。


 しかし、それでも俺は、諦めず必死に努力をし、あのアルデバード学園に入学をした。


 その後も努力はした。


 努力だけなら、学園の誰にも負けない。

 そう強く確信できる程に、精一杯修行に取り組んだ。


 しかし、現実は非情で、今俺は序列戦で4連敗、あと1敗すれば退学という窮地に立たされている。


 退学すれば、当然術師団入団の可能性は殆どゼロになる。

 つまり、ここまで懸命に追いかけてきた夢への一歩が、潰えてしまうことになるのだ。


 ……だからこそ、今回だけは負けない。負けられない。


 と、そう思っていたのに。


 次戦の相手を聞いて……俺は絶望をした。


 思わず、棄権をしたくなった。


 ──夢を諦めそうになった。


 それだけ、避けたくなる程に衝撃の相手であった。


 しかし──すんでで踏み止まった。


 誰が相手であっても、決して手は抜かず、絶対に諦めない。そうすれば、きっと勝利を掴むことができる。


 そう、身をもって体現してくれた、1人の親友の姿を思い出したから。


 息を吸い、ゆっくりと吐く。


「……よし」


 決意は固まった。


 あとはひたすら勝利に向かい突き進むのみ。


 そう強く思った俺──アロンはゆったりとした、しかし力強い足取りで、序列戦前期最終戦、その会場へと向かった。

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