カレン
ホントにいいのかな?
アイドルで居たいのかな?
このままでほんとにいいのかな?
もう…わかんないや…。
その日カレンは初めてマネージャーと喧嘩した。
いつも素直に聞いていられた言葉もこの日は信じられなくて何を言われても嘘にしか聞こえていなかったのだ。
「カレン君だけでソロデビューしないか?」
私だけに向けられたその言葉。初めは何を言われてるのかわからなかった。
小学生の時にテレビで見たアイドルの女の子たちがすごいキラキラして見えて、私は夢中になった。
それから毎日歌の練習して踊って、繰り返し同じ番組を見て同じように踊れるくらいになった。
でも、憧れてはいても現実的な夢ではないと幼い心にもわかってはいたのだ。
うちは裕福とは言えない家庭だったからだ。
お父さんはいないし、お母さんは毎日遅くまで仕事をしてきて朝も早くからでかけていく。それが私とまだ幼い弟のためだと知っているから、甘えることもできなかった。
中学進学を控えていた私に母が言う。
「カレン、アイドルになりたいならやれるだけやってみなさい。後悔はやった後にすればいい。まずはいい学校に入ってそれからね」
ホントに嬉しかった。アイドルになる事が嬉しかったんじゃない。お母さんが私を見ていてくれたことが嬉しかったんだ。
それから苦手な教科も先生に聞いたり、友達から教えてもらったり、少ないおこずかいを使って参考書も買った。
桜が奇麗に咲いて、風が良い匂いを鼻に残していく頃に、お母さんの笑顔を見ることができた。
もちろん学校に受かったことも嬉しかったけど、お母さんが涙まで流して喜んでくれたことがホントに嬉しかった。
今でも、思い出すだけで涙が出てきちゃう。
それから二年たって私はアイドルになることができた。
もちろん努力していっぱいいっぱいオーディションにも落ちて、それでも何とか頑張って諦めずに前を向いて…。
今いるグループは本当にいい子たちばかりで、よほどのことがなければケンカなんてしたことがない!。
そういえばプリンを食べちゃったとかそんなことくらいかな…。
クスクスっと笑みが浮かぶ
みんな大丈夫かな?
今日は何日かな?
お母さん心配してないかな?
考えれば考えるほど頭の中はぐるぐる回転するばかり。
「誰かぁ~、いないのぉ~、ねぇ~」
「出してよ~、ここから、出してったら~」
暗闇の中でひとりもがいてみても、何の返事もしない。
音もしない。
ただただカレンの声が反響するだけだった。
そしてまた繰り返される
ホントにいいのかな?
アイドルで居たいのかな?
このままでほんとにいいのかな?
もう...わかんないや...。
とある郊外の工場跡地
ここはその倉庫の中の、更に小さな部屋の小さい物置の中。
暗闇の中で一人助けを待つ私。
考えることすらも、少しずつ出来なくなってきていた。
もう、どうでもいいと思ってしまうほどに――
※作者の後書きみたいな落書き※
この物語はフィクションです。
登場人物・登場団体等は架空の人物であり、架空の存在です。
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