第66話 興奮!華厳の滝

 …王子たちが歩くこの目抜通りは国道119号線 (日光街道) の終点で、市街の中に至っては二荒山神社や日光東照宮の参道となり、通り沿いには商店や土産物屋が並んでいる。

 …子供たちは通りの歩道をしばらく歩いて「日光物産」という看板を付けた建物に入った。

 建物内は1階が土産物売場、2階が食堂になっていて、王子たちはここで昼食をとった。

 …お昼ご飯の後は、そこから1クラス1台づつ観光バスに乗って奥日光に向かう。

 …動き出したバスが間もなく日光市街の端を流れる大谷川を渡る際、車窓左手に朱塗りの木橋「神橋」が見える。…バスガイドさんの説明で、その橋が天皇家の人しか渡ることが出来ない橋だということを王子は初めて知った。

「だから神橋って言うんだな…!」

 などと思っているうちに、車は市街から山間へと向かい、車窓両側に山容が迫ってくるといよいよ登り勾配が一段ときつくなって急坂にヘアピンカーブの連続する「いろは坂」へと上がって行く。

 …時節的には新緑が山肌を彩る頃だが、今日は雲が低く立ち込めて、濡れているような木々の葉の中を進む。

 登り坂の途中で、バスは千切れ雲なのか急に現れる濃い霧のかたまりに入ったりしながらエンジンを唸らせて次々とやって来るカーブを曲がって行き、車内の子供たちは遠心力に身体を揺さぶられながらキャ~キャ~と喜んでいた。

 …しばらくの間、右に左にぐるぐると頭を振りながらひたすらヘアピンカーブをやり過ごして、ようやくバスはいろは坂を上がり切った。

 …次に寄るところは奥日光を代表する景勝地、華厳の滝である。

 実は王子もこの華厳の滝見学を、今回の旅の中で一番楽しみにしていたのだ。

 そんな気持ちの高揚とともに、間もなくバスは華厳の滝観瀑台駐車場に到着した。

 車を降りた王子は、キョロキョロと周りを見回し「滝はどこだ?」と目で探したが、引率の先生が、

「みんな、こっちだ!」

 と叫んだので声の方へと走ると、滝の見学は「観瀑台エレベーター」というのに乗って行くということだった。

 エレベーターと言ったら建物の中にあるものと思っていた王子は驚いたが、とにかくクラスメイトたちと一緒にそのエレベーターで下に降りて行った。

 …下に降りて扉が開くと、山崖下に通路が伸びていて、そこを歩いて行くと先には観瀑デッキが見えた。

 王子が気持ちを高揚させてそこに向かって駆け出すと、だんだん「ドドドドドッ!…」と大きな水音が響いて来た。

 …そして観瀑デッキに立って、真正面から見た華厳の滝は、想像していた以上に大迫力の偉容で王子の目に飛び込んで来たのであった。

 間近に見た華厳の滝の、その圧倒的な音と水しぶきの凄まじさ!…。

 さすがに日本三大瀑布の一つに数えられる名滝である。(ちなみにあとの二つは那智の滝と袋田の滝である)

 その豊富な水量の源は中禅寺湖の湖水で、落差100メートルの山崖上からダイレクトに水塊を次々と落下させていた。

 滝壺から豪快な響きとともに吹き上がる水しぶきは、そのままミスト状の霧になってびゅうびゅうとこの観瀑デッキまで押し寄せて来る。

 竹之高地の不動滝とは桁違いの迫力である。

「カッコいいぜ…華厳の滝…!」

 王子にしては珍しくその景観に大感動したのであった。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る