秘密に殺される「一」
その日の夜中、私はカクヨムと話しながら悩んでいた。妹に、私がカクヨムと話せることを伝えるべきかどうか。
私は目の前に浮かんでいる、喋るカクヨムロゴが現実だという確証を得ていない。私は確かに体感しているけれど、私の頭が壊れている可能性だってある。
「オマエは何を悩んでるですか」
「うん、妹に――」
「話したければ話せばいいです。話したくなければ話さなければいいでし」
私は今日、妹と共闘することをカクヨムに話した。妹はあくまでサポート、意見を言う役でありアカウントを共有していないと言うことを伝えたかったから。そして、妹に「姉だから」という理由で評価をさせるつもりもないということを伝えたかったから。
妹は私と約束した。絶対に身内票は入れないと。良いと思ったものにしか評価をしない、ただ一人のユーザーとしてカクヨムは使うと。
「ねぇカクヨム、今日私は自分を宣伝するためにSNSにアカウントを作ったんだ。カクヨムのプロフィールにもちゃんと登録したよ」
「それはカクヨムの機能ですから使いたければ使えばいいです」
確かにカクヨムの言う通り、使いたければ使えばよいというものなのかもしれない。外部での宣伝はきっと、努力だ。自分の小説を見てもらうために露出を増やす。仲良くなった人に見てもらい評価をしてもらう。これはネットで小説を書く上では当たり前のことなのだろう。
私はかつてそういう行為を毛嫌いしていた。まるで不正行為を見るかのように。小説だけで勝負することこそが、正しい姿勢だと。でも今はなんていうか、言葉にはできないけど、ちょっと宣伝頑張ってみようかなということくらいは思っている。(この問題は人それぞれという言葉で片付けるのが一番良いのだろう。)
「ねぇカクヨム、例えばさ、一億人友達がいて、その友達が友達だからって理由で評価したつまらない小説と、誰にも見せていないけどすごく面白い小説どっちが上かな?」
これはずっと、カクヨムに聞いてみたかったこと。ネット小説投稿サイトという、時代の最先端を走るカクヨムが小説をどう捉えているかを私は、ずっと知りたかった。
「それがわからないから、オマエは小説を書くのですか?」
カクヨムの答えは、答えではなかった。でも何か答えのような気がした。
「ねぇカクヨム、今の言葉……私がいつか小説に書いてもいいかな?」
「…………」
カクヨムは何も答えず、私の視界は急に暗くなる。
暗闇が晴れた時、私はパソコンの前に座っていた。ああ、そうかカクヨム空間から外に出されたのか。動機、胸が苦しい。カクヨムに嫌われたかもしれないという不安。自分の言葉ではない言葉を、書いていいかと言った浅ましい自分を――――――――消したい。
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