ぐるぐる戦争旅行記

ガラスは割れるからこそ好まれる(或いは戦いの幕開け)

 戦争だ。これは私の戦争だ。ヤマサトなんかに負けていられない。

 信じろ自分と、自分が生み出したキャラクターたちを。自分を信じることができない時は、キャラクターたちを。


「ねぇ✕✕✕✕、私の小説はダメなのかな?」

「えっ……そんな事ないと思うけど、たまたま今回上手く行かなかっただけじゃないかな。ほら、ラノベは初挑戦だし」


 私はまだサトカの部屋にいた。ヤマサトはあの後、早々に帰ってしまったから今は二人きり。


「…………」


 サトカはとても元気がない。もしかして心が折れてしまったのだろうか? 才能もあるくせに? 過去にクラスやカクヨムで好評価を得たくせに? 私はとても友達がいがないことを思う。


「サトカもカクヨムに戻ってきなよ。ほら、アカウントは私以外に教えないとかにしてさ」


 悪魔の囁きもしれない。でも私はサトカをなんとか支えたかった。いや、正直に言おう。

 私はサトカの小説を見てまだ学びたかった。ヤマサトに勝つためにも。だからこんなところでサトカにくたばってもらっては困るんだ。


 私は認めている。確かにヤマサトの言う通りサトカの新作はつまらない。でもそれはあくまで「前作に比べてつまらない」だけであり、私の小説よりはおもしろいものになっていたと。(出だしと少し読んだだけなのにそう感じたということは、間違いないだろう。)


 その日の晩、私は真剣に悩み、考え、苦しんだ。今手元にある未公開小説の中の最高傑作であろう『黒の国のアリス』をカクヨムに出すかどうかだ。

 かつてこれは出版社に「断られた」作品。でもきっとこれは少し手を加えることができたら、良いものになるという確信がある。今の今でも。


 結論、私は今回の戦いに『黒の国のアリス』は使わない。非常におこがましいととられてしまうかもしれないが、今出すべきではない、今出すのはもったいないと私の中の私が、結論づけたからだ。


 もう少し技術がついてから。もう少し私のカクヨムアカウントに注目を集めてから、これは出す。そういうものだ。

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