キリシマ・サトカに殺される「三」
サトカと友達になったことは私の執筆に大きな力を――与えはしなかった。やはり書けないものは書けない。
「ねぇカクヨム、今日はキリシマ・サトカと友達になったよ」
「そうですか。オマエはそれで嬉しいですか」
私は今日もいつものように、白と濃いめの水色だけで構成された空間の中でカクヨムのロゴと話していた。
「うん、なんかね。でもサトカ、カクヨムを辞めちゃったんだって」
「キリシマ・サトカはカクヨムを辞めたですか?」
「あれ? カクヨムは知らないの?」
カクヨムがあまりにも元気なく言ったので、私は驚いてしまった。
「キリシマ・サトカがどんなペンネームでどんな小説を書いていたかもわからないのにどうしてカクヨムが知ることができるですか?」
この前カクヨムがキリシマ・サトカと口にしていたような……と思ったけれど私は言わなかった。どうせこの非現実的な存在は、私に真実なんて明かしてくれないだろうから。(明かされたとしても私にそれを確かめようはないし。)
正直私は彼女が羨ましい。古書店の娘なんてできすぎた人生。きっと小さい頃から本に触れ、小説も当然のように書いてきたのだろう。
さらに顔もよく、個性もある。性格だって「またサトカに会いたい」と思わせるくらいにいい。
私にないものをサトカは全てもっている。
「オマエもいつかカクヨムを辞めるですか?」
「私は辞めないよ」
そう言い切ったのは、カクヨムが妙に寂しげだったからなのか、それともサトカへのライバル心なのか。とにかく私は、強くそう思ったのだ。
「私サトカに負けない小説を書くから。よろしくねカクヨム」
「なにをよろしくなんですか? カクヨムは投稿サイト。小説は自由に投稿すればいいです」
期待通りの返事ではなかったけれど、これでいい。私はカクヨムで結果を出したい。だから辞めるなんて選択肢はありえないんだ。一度公開した小説達を消してまで、辞めるだなんて。
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