設定に殺される「一」

 カクヨムと、はじめて話した日を私はよく思い出す。あの時は――――いや、あの頃の私は本当に精神的にかなりまいっていたし、カクヨムと本当に話したと錯覚してしまったのかもしれない。

 確かに、錯覚したと言い切るには生々しい記憶がある。でも、非現実的な話ではある。(もしかすると私は、あの経験を錯覚だと思い込みたいのかもしれない。)


 そんな感じで、私の思考は少し不安定ではあった。でも――――


「よし!」


 でも、その思考、或いは推測はとても良い効果を私にもたらしてくれていた。そう、最近の私は何故か筆の進みが良いんだ! 書くのが楽しい、そして良いものができる気がする!

 もしかすると、非現実的な経験が私を作家として成長させてくれたのかもしれない。


 この日、そんな絶好調の私が書いていたのは小説そのものではない。第一章を書いてから、ずっと手が止まっていた連載小説『殺罰―さつばつ―』の設定だ。実はこの作品は第三章まで書き上げてはいたのだけれど、どうも気に入らなく書き直している最中。

 だからこそ、より良いものにするためにこうして設定を整理しているというわけで……。



【メギド】宇宙衛星より、超圧縮金属の矢を地上へ落とす質量兵器。


【ダウンサイジングの嵐】食糧難対策で、人類を小型化しようとした技術が嵐になったもので、巻き込まれた生命体を小さく縮めてしまう。


【少女A】細胞を本体から切り離すと、そこからクローンを発生させる無限増殖する少女。水圧で潰し続けいずれ石油に該当する資源へと変質させることを狙い、海の底のさらに底へと沈められた。



 私の筆(ようはタイピング)はスイスイと進む。この感触はとても気持ちが良く、気分も良い。


 こうして設定をまとめていると、早く発表したいという気持ちが湧いてくる。これはきっと「このアイデアは私のものだ!私が考えたんだ!」と、誰かが似たようなものを書く前に主張しておきたい気持ち。要は弱さだ。

 この弱さは作家にとって本当に良くないものだ。事実『殺罰―さつばつ―』の第二章以降を発表できないのは、その弱さのせいで、作り込みが雑な小説になってしまったせいだから。(つまり私は殺罰を突き詰める前に公開してしまったのだ。)

 でも、今の私は違う。こうして書き出すことで設定を認識、世界観に破綻がないか徹底的に追求している。そう、私は小説を、今までにないくらい冷静に見つめることができていた……はずだった。


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