4月19日 行きて帰りし蜘蛛の子たち

 春、それは命が芽吹く季節。

 雪車町地蔵だ。


 冬場、軒先から姿を消し、すっかりいなくなってしまっていた蜘蛛たちが、最近になって戻ってきた。

 もちろん、こどもの世代である。


 まだまだ小さな体で、しかし立派に巣を張って獲物を待ち構える様は、まさしく蜘蛛としての威容である。

 毎年のことながら、いろいろと面倒な虫を捕食してくれる彼らが姿を見せると、安心と不思議な親心のようなものが浮かんでくる。

 ちょっとしたことで巣を放棄して逃げ出したり、大きな餌を嫌がったりするさまは、本当に愛おしい。


 彼らの縄張り感覚はとても優れていて、決して一定間隔以上の距離に巣を作ろうとはしない。

 なので、一等地を獲得した蜘蛛ばかりが大きく成長し、ほかの蜘蛛たちは小さなままなんてこともよくあるのだ。

 競争社会といえばそれまでだが、これはこれで自然の趣が窺える。


 元気いっぱいの蜘蛛たちは、成虫よりもアクティブに活動する。

 動きも俊敏だし、食欲も旺盛だ。

 これからも健やかに成長し、また子孫をたくさん残してほしいものである。


 以上。



(ペットを飼う感覚?)

(箱庭を眺めている、が正しいでしょうね。自然の中にはこういった事柄がたくさんありますし、楽しいですね)

(ほーん)

(喧嘩するときは激しいんですよ? まあ、その話はいつか、どこかで。それでは、アデュー!)

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