負けられない想い
時は少し遡り、夜と梨花が部室を退出した後。
「「「……」」」
部室内は静寂に包まれていた。
残された三人の表情は暗く、目は生気がなくなったかのようで、死んだ魚のような目になっている。見るからにDHAが豊富そうだ。
「……あの、部長。勉強を教えてください」
極寒零度のように気まずさで冷え切った空気の中。おそるおそるといった様子で手を上げ、口を開いたのは意外にもあかりだった。
夏希と瑠璃はつられて視線をあかりの方へ。しかし、二人の表情は驚愕そのもの。
しかし、それも無理はないだろう。だって、あれほど勉強を嫌がっていたというのに、自ら勉強したいと声を上げたのだから。
「……おにいちゃんがはわたしたちに気を遣ってくれたと思うんです。それなのに、このまま何もしないのはおにいちゃんを裏切ることになる。だから、おにいちゃんの期待にこたえられるように、勉強を教えてください!」
あかりの瞳は真剣みを帯びていた。
正直、今のあかりは気が気ではない状態にある。
だが、それではかえって夜に迷惑をかけることになってしまう。
何よりも、補修と追試で夜とともに過ごす時間が短くなるなんて何が何でも嫌なのだ。
「……僕も、ナイトにバカだって思われたままは嫌だ。瑠璃先輩、僕にも教えてください!」
夏希だって、あかりと同じ気持ちだ。
ナイトの傍にいるのは自分であってほしい。だからこそ、梨花と二人きりで勉強するという夜の発言に傷付いていた。
それに、バカと言われて言い返せなかった自分も許せなかった。
確かに、自分はバカだ。けど、夜にバカだと思われたままは絶対に嫌だ。
「……そうだね。私も頼まれたからにはしっかりしなきゃいけないし、みんなで頑張って夜クンにご褒美をもらおう!」
「「おーっ!」」
やる気を漲らせ、こぶしを掲げるあかりと夏希。先ほどまでのやる気のなさはどこへやら。
「それで、瑠璃先輩。まずは何したらいいですか」
「そうだなぁ、まずは教科書の問題を解きなおそっか。わからないところは遠慮なく聞いてね」
「「はい!」」
やる気は十二分。しかし、問題を解く知識は不十分。
結局、全部といっても過言じゃないほど瑠璃はあかりと夏希に問題の解き方やら答えやらを聞かれる羽目となったのだが、それでも尚へこたれずに教科書とにらめっこをする二人を見て瑠璃は微笑んだ。
「私も頑張らないとな……」
二人の真剣な姿を見て、そう独り言ちる。
自分も二人のように頑張らなきゃと。
何よりも、夜クンを想う一人の女の子として負けていられないと。
~あとがき~
ども、詩和です。いつもお読みいただきありがとうございます。
さて、今回はいかがでしたか? 短いと文句を言いたい気持ちはわかりますがぐっと抑えてください。実は今回全部書き直してるんです台詞変えて本文ちょっとだけいじるつもりだったのに……。毎日投稿まだ四日目なのにもうつらいよ……。
でも、二、三年前に書いた文章を読み直すというのもたまにはいいものだと気づかされる日々です。だって、成長したな俺……って優越に浸れるしね。
夜に想いを寄せる女の子たちがこれからどうなっていくのか、そもそも三章のタイトルの意味とは、これからの展開に期待してください。
さて、今回はこの辺で。
それでは次回お会いしましょう。ではまた。
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