第82話 林間学校「1-5」
焚き火の極意は段取りで八割がたが決まる。焚き付けの用意も整い、焚火台の準備をする。
切れない刃物やカセットコンロ、ランタンやテントにタープ等も然り、使い慣れた物ほど危険が潜んでいる事に気付けない。
破損なども無く問題が無い事を確認すると生徒達ヘと向き直る。
『よし! 道具に問題は無い。 後は薪を組み火を熾すだけだけだ。 言葉にするとすごく簡単に聞こえると思うが、薪には並べ方があり、そこを間違うと火が熾し難い。 場合によっては火が大きくならず消えてしまうんだ。
尤も、簡単に済ませるならば、ガスバーナーや着火剤を使えば良い。 だが、それが用意出来なかったらどうする? 火を使う事を諦めるか? 寒さを我慢するか? 基本を覚えていればそんな物は要らなくなる。 今からそれを教えるが、基本はさっきの質問の答えだ。
火が燃えるのに必要な条件を整えてあげる事が重要になる。 手本を見せるから良く観察し、その意味を考えて見て欲しい 』
子供達は頷くと
『火が燃え盛るために必要な環境を整える。ただそれだけの事だ。 その結果が目で見て分かるのも焚き火の良い所であり、それが焚き火の愉しみ方の隠れた魅力でもある 』
準備は整った。余り蜜に成らない様に気をつけ、新鮮な空気が供給されるように注意して組む。薪の組み方は色々ある。円錐状や井桁状に川の字に平行に組むやり方などだ。其々に意味があり、場所により組み方を選べば良い。
最初は細い枝を使い、火を着ける。薪の間に適度な空間を作るのは、内部の温度を上げ上昇気流を作り、煙突効果による燃焼を促す為だ。
メタルマッチを使いたい所だが、今回は身近にあるライターを使う。
火種が何であろうと良いと思う。薪の準備等の段取りとその後の対処の方が重要だからだ。
「じゃぁ、火を着けるぞ 」
麻紐の解した部分へと火を着けると、火が一気に麻紐へと広がっていく。フェザースティックへ火が広がると、薄くカールした部分へと次々に燃え広がっていく。火が少し大きくなり炎の立つ場所、温度の高い場所を確認するとその場所へと細割の薪をそっと載せていく。細割の表面に幾つも出来た棘棘の先端に最初に火がつくと次第に火が大きくなっていく。炎の状態を視ながら細割を足し、次いで少し太めの薪を足していく。その頃には火は大きくなり火から炎へと変貌していた。
十分に火が廻ったのを確認すると太目の薪を数本投入する。
薪が燃えるパチパチという音と香、炎の揺らめき。
あとは火の状態を視ながら薪を足していけば良い。
「では皆で始めてくれ 」
その言葉を聞くと子ども達は焚き火台へと向った。
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