第80話 林間学校「1-3」
この二つの班の女の子達は、しっかりと調理が出来るようで見ていて安心だった。
包丁の使い方一つをとっても気配りが感じられたのだ。
刃物を手渡す際に握りを相手側に向けて持つ。
至極当然の事なのだが、
『これって普段から気を付けて居ないと出来ないのよねぇ 』
大人でも刃を向けて渡して来る事があるのだから。
刃が剥き出しであれば危険であるとの認識は大く、包丁は誰でも注意が出来ると思う。
しかし、キッチン鋏等は大人でも忘れがちになるのだが、彼女達はしっかりと安全を意識して作業が出来ていた。
今、
カレーに使うオーソドックスな野菜、ジャガイモに人参、玉ねぎを手際良く
ジャガイモや人参の皮はピーラーで剥くが、それ以外の野菜は皆が包丁を使っていた。
ジャガイモと人参は乱切りにし、玉葱は櫛切りした。
それとは別に、ジャガイモと人参に玉ねぎを其々一個とニンニクと生姜を卸金で摩り下ろしていた。
野菜を摩り下ろしカレーに混ぜると甘みや旨味が増すからだ。
だが、それだけでは無かった。
『初日の夕食はカレーよね。
「私達の班は大き目のお肉が入った欲張りカレーが良いって話になったのですが、大丈夫でしょうか?
皆、普通のカレーは作った事はありますが、焚き火料理となると不安で。
それに何時もと違うお鍋では…… 」
『それは大丈夫よ! 火加減で悩んでいるのでしょ? そこは男の子たちがしっかりとやってくれるわよ。
それと、ダッチオーブンは、大き目のお肉も柔らかく出来るから普通のお鍋で作るよりも簡単だと思うわよ 』
林間学校で行なう作業は、基本的に共同作業である。
料理も男女協力して行なうのだ、調理を女の子が行なう時、男の子達が火加減等をサポートする。
片付けも分担し、手分けして行なう。
火を使う調理、ガスコンロではなく薪を使った調理はハードルが高く感じる事だろう。
一昔前なら、田舎へ行けば竈がある農家もあったのだが、最近はそういった物に触れる機会は皆無であり、テレビなどの映像でも見ることが無くなっていた。
『当日も同じ予算内で材料の手配をしているのよね 』
「はい、夕食は一人300円迄ですけど、ジャガイモに人参、玉ねぎとカレールーに牛乳は学校支給になります。 申請すれば蜂蜜とトマトが各班支給されますので、鹿嶋さんの班も私達の班も申請しました。
あと白米も人数分は支給されます 」
カレールーは業務用の物が用意されるが、甘口と中辛、辛口のどれを使うか事前に申請する。
みな中辛で申請していた様だ、甘さや辛さを調整し易いからがその理由だ。
『今日は同じ物を用意してありますから、本番だと思ってチャレンジね!
今日のお肉はこれね。
肉は部位と量を申請すると、地元の生肉店が用意をしてくれる。 一括購入となるため、店舗価格よりも若干お徳に購入が出来る。
価格も提示されており、決められた予算内で必要な量をお願いする事になる。
今回も、宿題の一環として学校を通し一括購入をしている。
ただ、生肉店のご好意で受取日は其々の班で指定が出来た。
『じゃぁ、ここからは分担して行なうけど担当は皆で決めてね。
先ず、お肉を切り分けて摩り下ろした野菜に混ぜて寝かせる係り。次がお米を研いで水加減を行なう係りね。 二人一組で良いかしら 』
「
『どちらも30分は寝かせるのよ。お肉の漬け込みとお米にお水を吸わせるの。
お肉は柔らかくなって美味しく。お米はふっくらと炊き上がるわよ 』
それぞれが分担した作業をこなしていく。
◇ ◇ ◇ ◇
その間に男子チームは、薪割りと焚付けの準備から火を点ける所を行なう。
最終的には調理がし易い
『皆、怪我が無く良かった。 何より普段使わない鉈や斧を使ったからな。
決められた手順で落ち着いて行なえば怪我等はしない。
常に周りに気を配る様に心掛けてくれ。
特に、斧を振り下ろした後に、割れた薪が飛ぶ事がある。
この怪我には注意してくれ 』
『それと、斧や鉈を使う時には軍手は厳禁だぞ! あれは滑るからな。
必ず滑らない物を使用する事が大事だ。 無ければ素手の方がよっぽど安全だからな。 鉈や斧がすっぽ抜けると他人が怪我を負う。 自分は怪我をしないから始末が悪い。 自分が怪我をしない事も重要だが、一番は他人に怪我を負わせ無い事が重要だぞ。 折角の楽しい思い出も台無しになるからな 』
『次は、今回使用する薪は二種類ある。
今焚き付けを作った薪が杉で燃えやすいのが特徴だ。
杉や松は焚付けに使うと早く火を熾せるぞ。
炎も高く上がるから気をつける事。だが、早く燃え尽きてしまうから調理に使うにのは難しいぞ。
もう一方は
最近関東周辺のキャンプ場で多く売っているのは、杉や松が多く、逆にホームセンターでは
焚き火台へ焚付けを組んで行くが、この時にも注意する事がある。
『準備が出来たら、次に行くぞ! 』
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