第70話 ヘキサライトにて 『紅花』
車窓へ目を向けると、ヘキサライトの街並みを映しながら流れていく。
この国の建築技術は高く、ローベンシアと似た雰囲気を持つ建物が多かった。
石造りの壁や、モルタルの様な壁、窯業系の壁材に屋根材など……
凝った意匠のドアや門扉などが多く見られ、職人の技術力も高いという事がその造りからも判ると言うものだ。
庭を囲む柵なども、凝った意匠を施された物が多く、デザインセンスも高い事が伺えた。
この町を訪れる旅人達は、多くの家や商店の窓に、透明な板が嵌め込まれており、ガラスの様な物が普通に流通している事に驚かされる事が多いそうだ。
この街は高度な設計思想に基づき、再整備をされたと言われている。
他国での動乱を間近に見た影響か、大規模な改修が行なわれたのだそうだ。
車道と歩道が完全に分離しており、住民への配慮もされた設計だと感じる。
夜の治安を向上させる目的で、街路樹と等間隔で設置された街灯が目に入るが、地球の様に電線は見えないのだが、何かしらの動力で、夜の街を照らしているのだろう。
視線を路面へと向ければ、滑らかな切断面の石畳を、極小に敷きつめた歩道には、色取り取りの石を使い、美しい文様を描いていた。
その継ぎ目も均一であり、目地を細目に抑えている辺りも、職人の技術力の高さと拘りの表れだろう。
車道部分も、材質は不明だがしっかりとした舗装が成されていた。
パン屋なのだろうか? 親子連れが昼食を何にしよう?
と悩んでいる様子が微笑ましい。
街を行く人々の表情は、活気に溢れ暗いものはみなれない。
良い国なのだろう事がその景観から汲み取る事ができた。
そんな景色を眺める
「ヤマト様の予言が当たった様ですね 」
『そのようね……。 でも何故知っていたのか、 今となっては聞きようはないのだけれど 』
「残念ですが…… 既に
『お二人とも、今頃は
◇ ◇ ◇ ◇
勇者となった者の宿命…… 運命の鎖は途切れる事は無い。
違う場所、違う世界へと引き継がれるだけ……
勇者と魔王、その連鎖の終焉の時まで。
また、
また違う世界で生き、再びと出逢う事を。
そして、負の因縁を断ち切るために。
『この戦いで終わるのかしら…… 』
ヤマトは言葉を残していた。
「再びこの世界に、人では抗えぬほどの戦乱が訪れる。
人ならざる者の手により、異形の者との戦いが。
戦火は広がりヘイムスリング全てを舐め尽くすだろう。
俺達は、因縁を断ち切るため旅立つが、後を頼む。
そのために、
いずれ
◇ ◇ ◇ ◇
「エルマー王国、アロイス帝国共に、不穏な行動に出ているのは御存知ですか? 」
『何を企んでいるのかは、調査中よ。
今、
「あの方は、今は
『ああぁ、今は
「そうですか、皆様、新たな名を頂いたのですね……
話を戻しますが。
両国、特にエルマー王国は非常に危険な状態です。
怪しげな秘術を使い、なにやら企んでいるようです。
近々、開戦をするのではと言うのが、父上達の見立てです 」
『そう、秘術ねぇ…… 何をしようというのかしら。
「あと、アロイス帝国なのですが。
侵入を試みた部隊が全滅したそうです。
何かを知られたくないらしく。
正規のルートであっても、国境を越えることが出来なくなったと、先程 連絡が入りました。
他国との国交を断絶したとも捉えられますが…… 。
これは、ブリタニア王国から齎された情報なのですが、帝国内で大規模な召喚術を使った形跡があるそうです。
何れにしても、両国共に危険度が増したという認識でした 」
『兎に角、
何か判るといいのだけれど 』
「そうして頂けると助かります 」
『それにしても、エルマー王国、アロイス帝は何が目的なのかしら。
以前からの疑問なのよね。
力を得るためと…… でも、そんな事実は無いのよ? 』
「そうですよね。
我々も過去の事例から確認したのですが、仰るとおり、彼らが行なった事は共食い以外には理由が見つかりませんでした。
力を得られる…… そんな事実は見つからなかったのですがね 」
『それも…… 謎ね。 両国では、真しやかに噂されているけどね。
「喰らえば永遠の命を齎し、奪えば強大な力が手に入る」
……そんなまやかしに引っ掛かる、愚かな国と言う事なのかしら 』
車が一度止まり、再び走り始めた。
車窓から見える景色が、街並みから庭園へと変わっていた。
どうやら目的地へと到着したらしい。
重厚な門扉を潜り抜け、白亜の邸宅へと続く道を車は進んで行く。
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