第49話 趣味の時間

 資金問題も無事に??? 解決したので早速復興のお手伝いを行なう。

「もう、そう思う事にして諦めたとも言うが…… 嘆いても仕方が無い 」


何故なら、エルマー王国の動きを考えると、あまり時間がない様に感じるからだ。


 紅蓮ぐれんに続き、紅花べにばなにはヘルヴェスト連邦の動向調査をお願いした。

ただの調査では無く、マリアからの親書を持参している。


 今回の不作はヘルヴェスト連邦も被害を受けている。

状況を説明し此方からの支援を打診するのが目的だ。

こちらの作業は七日も掛からず終わる見込みで、次はヘルヴェスト連邦へ行こうと思っているからだ。


 目的は二つ、不作への支援と弾丸列車バレットラインの開通。

現在、ヘルヴェスト連邦へ行くにはエルマー王国を経由するのが最短になる。

山越えと言う手もあるのだが、時間が掛かりすぎるのだ。 

その解消のための弾丸列車バレットラインだったのだが、開通目前の崩落事故で中止となった。

崩落現場前後の工事は完了しており、後は開通をと言うタイミングの事故だった。

再工事の提言もあったのだが、優先度の問題か他国の思惑か……

結果先送りにされた。


 今後の事を考えると、開通させた方がエルマー王国への牽制にもなるばかりでなく、ヘルヴェスト連邦との関係強化にも繋がる。


 ヘルヴェスト連邦とローベンシア王国とは古くからの同盟国であり、王族同士も他国と比較すれば良好な関係であった。

特に現首相とは縁戚関係であることも理由の一つだ。


エルマー王国とヘルヴェストが隣接する境界駅から先が崩落原場で、トンネルが開通さえすれば運行まではそれほどの時間を要しないと想定される。


 なにより、俺達の時空庫と愛車のチート技で開通が容易であることが判明したからだ。

これは恩を売っておく方が良いとの結論になった。


    ◇    ◇    ◇    ◇


魔導騎手シュバリエの錬成を、夜な夜なしている。

「これが本当の夜なべ・・・だ…… 」

 

 休憩を挟みながらではあるが、結構しんどい。

最初の頃に比べると、一体辺りの錬成時間は短縮され一時間も掛からない。

それでも、日に五体以上を錬成していると流石に飽きて来る。


 そんな中、気分転換に俺好みの設計をしはじめて早十日、ようやく設計が完了した。

あとは錬成し組み上げるだけ、非常に楽しみだ。


 自分で思考し自律制御された人型ロボットは男のロマンである。

それを自分自身の手で設計し製作出来る喜びを、どう表現したら良いのか?

自分の語彙の無さには…… 情けなく思う。


 早速、完成した設計図を元に錬成をはじめようと思ったのだが、ふと疑問を感じた。


沙弥華さやか、少し地球へ戻って来るよ。 三時間くらいで戻るから 」


「えっ? いいけどどうしたの? 」


「うん、 予想なんだけどね…… これから錬成する三体は地球での方が良いと思う。

何でか聞かれると困るのだけど…… 」


「……わかった。 気をつけて行って来てね 」


    ◇    ◇    ◇    ◇


愛車に乗り、目的地を設定。

何処にしようか、あそこかな?

富士山信仰で有名な神社を目的地に設定し出発した。


駐車場に着くと、車の後席に移動し作業を始める。

設計に沿って、丁寧に感覚を研ぎ澄まし、細部まで想いをのせて錬成してゆく。

開始から二時間が経過し、それは完成した。


時空庫へと仕舞うと、早速ローベンシアへと戻る。


    ◇    ◇    ◇    ◇


純白のボディーに赤いラインが映える。

女性型の魔導騎士シュバリエが目の前に佇む。


「くふ~っ! これだよ! これ! 夢が現実になったよ~! 」

女性型なのは……趣味ですが何か? 

男性型造っても萌えないしね。

いつかは大型合体ロボも造りたい!


「……お兄ちゃん? 大きいのとか、合体するのとかは要らないからね! 」


『なにっ!? その様な物も錬成できるのか! 』

白銀しろがねの尻尾が高速でフリフリされていた。


「ヒーローモノの定番は外せないだろ? せめて……強化外装とか強化外骨格とかパワードスーツ位は欲しいよな~ 」

そうか! 魔導騎士シュバリエ用の特殊兵装で強化外装とかもありか。


「は~っ、趣味も程ほどにね 」


エルマー王国の魔導騎士シュバリエは戦術単位が三体で一ユニットになる。


魔導騎兵(軽騎兵・重騎兵・高速騎兵など)戦術単位が三体

機械化歩兵(装甲騎兵・狙撃兵など)   戦術単位が三体

機甲猟兵(山岳猟兵・狙撃兵など)    戦術単位が三体


それに倣って三体を錬成した。

純白の女性型ボディーで、装甲の分割部には赤いラインが特徴の高速戦闘向きの魔導騎士シュバリエ

純白の女性型ボディーで、装甲の分割部には青いラインが特徴の近接戦闘向きの魔導騎士シュバリエ

黒鉄色の男性型ボディーで、装甲の分割部には銀色のラインが特徴の高速戦闘向きの魔導騎士シュバリエ


明日は特殊兵装の錬成と特殊魔法の刻印を行なう予定だ。

特殊魔法の刻印…… いつの間にか習得していた。

サリアさんに確認したが、知らない技術だそうで、始祖ヤマトの記述にも無かったそうだ。


    ◇    ◇    ◇    ◇


 昼頃まで肥料の錬成を行い、本日の作業は終了にさせてもらった。

久し振りに温泉に入りたくなったのだ。

残ったメンバーで渚温泉に来ている。


「二週間振り位だろうか? 随分来ていないような感覚になる 」

 

温泉に浸かりながら今夜も錬成に励みます。


今日は特殊兵装と特殊魔法の刻印を行なう。

兵装の方は自立浮遊式のソードバインダーとアンチマテリアルライフルや光子剣フォトンソードだ。

強化外装なんかは後の宿題だ、設計は合間で行なおうと思う。


特殊魔法は時空保管の魔法付与。 

いつ覚えたのかが判らない…… 魔導書スペルブック一覧リストを確認したら空間魔法が取得されていたのだ。

転生リーンカーネーションと言い…… 」

何が切欠で習得したのかが判らない。

でも、便利だから使わない手は無いので魔導騎士シュバリエに組み込み、兵装の時空保管と、装備の瞬間着装とを実現したい。

 

 時空保管は、俺と沙弥華さやかの時空庫の規模が縮小された下位互換のようなモノだった。

余り詳しくは調べられなかった(時間が無かった)のだが、任意に入出庫が出来、出庫場所は指定された場所へ出来て、収納された物は時間経過が停止される。 

効果範囲は自機より五m以内と俺達のものよりも狭い。

俺達のものはレベルが上がったのか? 効果範囲が15m程にまで広がっていた。


時空庫内での錬成は無理だった…… 

「これが出来ると自動修復が可能なんだけどなぁ 」


特殊魔法にアレンジを加え、設計概念と錬成式を組み込んだ刻印が出来れば可能性があるが……。

今は時間が無いので後回しにする。


全ての作業が終わり、月明かりを眺めながら温燗をいただく。

疲れた身体に日本酒が染込む感じに一息ついた。


兎に角、これから向かうのは他国になる。

どんな危険があるか判らない。この三騎には自分が出来ない害意ある者との戦闘をしてもらおうと思う。

この先はわからないけど、現時点では命を奪う覚悟など出来よう筈が無い。


よぎる不安を日本酒と共に飲み込み、覚悟・・を先送りにしたのだった。

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