第34話 初めての戦闘、洞窟を抜けて(上)

 目的の洞窟近くへ辿り着くと車を時空庫へと収納した。 

いよいよ初の冒険だ。


 最初、洞窟を認識ができなかった、そこに在ると言われても見る事すら出来なかったのだ。

見えないから怪訝な顔をすると、その疑問答えたのは白銀しろがねだ。


『結界が張られていると言ったであろう、認識する事は難しいぞ。 

仮に認識出来ても、このままでは入る事も出来ぬからな 』


ローベンシアへ行くためにはこの洞窟から向かうと言っていた、あの車の機能なら問題なく走っても行けるとは思うのだけど……。

多分、ここを抜けて行く必要があるのだろう。


白銀しろがね、こんな風に隠された物を探す魔法とかスキルってあるの? 」


『当然あるぞ、あまり一般的では無いが結界(封印)感知や結界(封印)探査を使うな。

魔力を使っているからと思って、魔力感知や魔力探査を使っても無駄だぞ。

その辺の対策を講じておる物が殆どだからな。

特殊な魔法故、使い手は少ないがな。

結界師や符術師は多く無く、特殊な職業故非常に希少だな 』


 結界師や符術師とは、スクロールを作成するスキルに特化した職業で、非常に少ないらしい。

 魔法師だけでは駄目で、最低でも符術師のスキルが必須との事だ。

通常、魔法を使うのにスクロールや呪符など無くても良いのであまり問題にはならないが、生活魔法はスクロールで習得するのが一般的であり、各国で抱え込みを行なう程の職業だそうだ。


 ちなみに、錬成師と魔法師両方の職業を持つと、サブスキルにスクロール作成が発現するそうだ。

自分と沙弥華さやかにはその可能性があると言う事になる。


 結界や封印を張る場合、結界と魔力感知無効や認識阻害などの魔法を併用する事が多いそうだ。

結界や封印が在ると知られると、そこにお宝があると勘違いする輩が湧き、危険な状態になることが多いのだと言う。


 結界にも幾つか種類が在るそうだ。

難易度が低い順に、防御結界(封印)、侵食結界(封印)、封魔結界(封印)、耐魔結界(封印)、聖霊結界(封印)と続く。

ここに施されているのは聖霊結界で解除には高等魔術が必要になる。


 結界や封印を抜ける方法は、一般的には「結界(封印)貫通」と「結界(封印)破壊」「結界(封印)解除(解呪)」になる。

どちらも上級の魔法だが、白銀しろがね達三人は使用できるそうだ。

ただ、この結界は壊す事が出来ない理由があり、別の方法をとると言った。


で……どうやって入るか聞いたら。

『このままで問題はない。 ついて来るがよい 』

と言って洞窟に向かっていた。


白銀しろがねについて洞窟へと入って行く。

先頭は紅蓮ぐれんで俺、沙弥華さやかとリリス、白銀しろがねと続く。

「シロ君、結界には弾かれないの? 」


『問題無いぞ、そのまま気にせずついて来るが良い。

ただ、結界を抜けるまでは目視が効かぬ、MトレックのVR機能を使って足元に注意してついて来るのだぞ 』


Mトレックの機能はAR表示だけだと思っていた。

それは勘違いでVR機能も有していたのには驚いた。

VRモードに切り替えると視界が切り替わった! まるでそこには結界が無いのかのように、洞窟が口を開けて待っていた。

 

 VRMMOに出てくるダンジョンの様な様相だ! 少し鼓動が早くなるのを感じる。

隣の沙弥華さやかも同じように感じているのだろうか?


 暫く歩くと結界を抜けたようだ。 

何故判ったかって? それはMトレックが結界通過と教えてくれたからだ。 

「この道具も大概だね…… 」

 

 これには沙弥華さやか

「リリちゃん、Mトレックがあったらさぁ~ 結界(封印)感知や結界(封印)探査の魔法なんて要らなくない? だって見えちゃうもの! 」


「……そ、そうなのですね。

も……もの凄~く便利なのですよ~ぉ!? 」

とアワアワしながら天空を仰ぎ見た。


「また? 誰かに文句を言っているのかな……? 」

それを見た白銀しろがね達三人も、苦笑い? 

をしていたのでこの話題は封印し先を急ぐ事とした。


    ◇    ◇    ◇    ◇


洞窟に入り掛けたところで、疑問に思う事を確認する。

「この世界にさ、RPGに出て来る様なダンジョンが在るかは聞いていないけど。

ここの洞窟に魔物が居るって事はさ、ダンジョンと考えても良いのかな? 」


『この世界には地球のRPGに登場する様な、自然発生型の成長するダンジョンや、魔物を生み続けるダンジョンと言う物は存在しないの。 

 ダンジョンらしき物って言ったら良いのかしら?

ただ、遺跡や迷宮は在ることには在るわよ。

宝箱も宝石にお金もドロップはしないけどね。 


 発見されている所なんかは既に宝箱が無くなっているから、新たに迷宮を見つければ別だけどね 』

紅花べにばなが言うにはゲームの様な事は無いそうだ。


『魔物を倒して素材を採るか、魔核を採るかだよね! 革や骨、魔物によっては血に至るまで薬品や錬成素材になるよ。

後は肉が美味いのもあるかな? 地球で言うジビエだっけ、あんな感じだよ 』

そう紅蓮ぐれんが補足してくれた。


ダンジョンらしき場所、目の前に広がる洞窟は岩肌がむき出しであり、地球でもよく在る鍾乳洞や洞窟と同じように見える。

人の手が入っているのか、階段状の場所も見て取れる。

周囲の状況を観察して呟いた。


「見た目は普通の洞窟だね。 富士五湖にある蝙蝠穴みたいだ 」

ただ、ファンタジー小説の如く、内部は仄かに明るかった。


「何で明るいのかしら? 」


『これはな、この内部に発光性の苔が繁殖しているからだな。

魔素を吸収して発光しているのだ 』

先頭にを歩く白銀しろがねが振り向かずに答えた。


「この洞窟には罠なんてあるのかな? 」


『罠はあるわよ、但し、私達には反応しない筈よ。

結界を正規に抜けてきたモノには反応しないからね 』

どうやら正規に侵入したらしい。

どうやったのかが疑問だね。 

向こうに抜けてから聞いてみようかな? 


どれ位歩いたのだろう、結界を抜け既にAR表示に切り替えてある。

経過時間を確認すると二十分は経過していた。

『そろそろ接敵するが、準備は良いかな? 』

白銀しろがね兄妹ふたりに確認する。


その声で空気が引き締まった気がした。

白銀しろがね達四人は気楽に構えているが、沙弥華さやかと俺はアイコンタクトで行動に移る。

二人の右手にはハンドガンが握られていた。


白銀しろがねにお願いがある、それを告げた。

白銀しろがね……魔物の気配がしたら試したい事があるんだけど。

危険だったらフォローして貰えるかな? 」


『了解した。 リリスよ沙弥華さやかを頼むぞ。 紅花べにばな紅蓮ぐれんは後方を頼むぞ 』


 暫く進むと通路は広くなり、開けた場所に出た。

皆から先行し入て行くと周囲を見回し魔法とスキルを発動した。


使った魔法は光学迷彩と魔力感知だけである。

少し先に天井が窪んだ場所に魔力の反応が三つあった。


目視出来ていないのだが、鑑定を試してみる。

[トライアングル バット] 集団では行動しないが、常に三頭で行動し獲物を狩る習性がある。

これ以上の情報は出るのかな? 

鑑定アプレイザルでは無く他の方法は……

分析アナリシスかな、生物か魔物として考えると……

生物分析バイオアナリシスを使う事にした。

 

 先日作った魔法だ。 鑑定だけでは表示されない情報あったからだ。

「魔導+探求者」のスキルリストに錬成術系に必要な分析アナリシスがあったので不思議に思ったのだ。

鑑定があれば要らないのでは? そう思って試した。

試料は塩だ。 鑑定したら判明した。


 鑑定したら「南の極み 本生海塩(天日塩)」とだけ表示され成分は表示されなかった。

分析アナリシスではどうか? 結果は成分が個別に表示されたのだ。

ナトリウム 40% カルシウム 35% マグネシウム 15% カリウム 10%

 生物も分析したら詳細に判るかもしれない。

が、成分が知りたいのではないので限定するために他の魔法と組み合わせた。


 生物分析バイオアナリシスを使うと、その生体の習性などの情報が表示されたのだ。

試したのは言うまでも無くワンコである……。


分析結果は、地球の蝙蝠と同様にエコロケーションを使う事、超音波の他に魔力感知も使う事が判った。


「奥にトライアングル バットが三頭いる。

ワザとおびき寄せて確認した事があるから待機し欲しい 」


 白銀しろがね達は頷くと、通路側に戻り待機する。

当然だが白銀しろがねはすぐに援護出来る様な体制をとっていた。


 光学迷彩と魔力感知の他に例の魔法を重ね掛けして効果を試す。

 光学迷彩インビシブル消音サイレント氷霧アイスダストで温度を感知され難くする。

自分が寒くならないように風檻エアロ スフィアで冷気を遮断し、音響探査ソナー音響反射リフレクション音波逆位相リーバースウェーブの魔法を組み合わせたオリジナルの魔法、音響相殺アクティブ サイレンサーを発動する。

音響相殺アクティブ サイレンサーで超音波を相殺すれば、蝙蝠は目標を見つけられずに狂い飛ぶはず。


 準備は出来た。

グロック17で狙いを付ける。

窪みには普通なら当たらない角度だが問題はない。

なぜなら、発射された6mmの樹脂製の弾丸には、魔力が込められ的に向かって軌道を変えながら進むからだ。

狙った獲物を逃さない! まさに魔力誘導弾アクティブホーミング

サイレントとアクティブ サイレンサーの効果もあり、発射音は皆無だ。


狙った獲物に着弾! 一頭のトライアングル バットが絶命し、落下する。

脇にいた残りの2頭がパニックになり窪みから飛び出した。

普通なら、ここで狙撃者である俺へと殺到する筈の二頭は、訳が判らずパニックを起こし乱れ飛んでいた。

方向も判らないのか地面や壁、天井へ激突していく。


「上手く行ったようだ 」

急いで残りの二頭を片付けないと、この騒ぎで他の魔物を呼び寄せそうだ。

急いで標準を合わせてダブルタップ!


グロッグ17のスライドが二度のブローバックを起こす! 

次の瞬間、二頭のトライアングル バットは弾丸に貫かれ地面へ落下した。


『初めてにしては上出来だな。 新しい魔法を検知したが……創造したのか? 』


「ああ、少し疑問が合ってね。 上手く行ったみたいで良かったよ 」


「お兄ちゃん、その魔法は私にも使える? 」


「魔法の譲渡って出来るのかな? 」


そう思った所へ紅花べにばな

沙弥華さやか、魔導書を出してみて 』


沙弥華さやか

「え~っと、魔導書具現化スペルブックエンボディーだよね」 

と唱える。


さとる沙弥華さやかの魔導書へ手をかざしてみて。

意識下で譲渡トランスファーと詠唱した後に魔法名を唱えるのよ 』


俺は言われた通りに

譲渡トランスファー音響相殺アクティブ サイレンサー 」

と詠唱した。

俺の手が光を発すると魔法陣が展開し、沙弥華さやかの魔導書が淡く輝くき、発現し魔法陣を吸い込んでいった。


 残りの音響探査ソナー音響反射リフレクション音波逆位相リーバースウェーブ魔力誘導弾アクティブホーミングも譲渡しておいた。


「これは簡単で良いな! 」 


 その後は、出口を目指し交替で魔物を狩って行く。

当然であるが狩った獲物は時空庫へと仕舞っておくのも忘れない。

後で買い取って貰えるらしい、だって、この世界の通貨なんて持っていないから、稼がないとね。

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