第32話 洞窟へ向かうらしい

 いよいよゴールデンウィークだ、七日間なら二十一日滞在が可能だ。そこを利用してローベンシアへ行く事になっている。

だが、実際の休日は十日間もある、余裕をみて有給休暇を追加したのだ。


ローベンシアから渚温泉・・・へ戻って来た紅花べにばなと合流したので、明日出発する事にした。

途中までは車で移動し、着いたら車を時空庫へ収納すれば良い。



「シロ君、いきなりローベンシアに行っても大丈夫なの? 」 


沙弥華さやか殿、風の国・・・からビフレスト山脈を抜けて行く事になるのだがな。

ローベンシアへ抜ける洞窟が在るのだよ。』


白銀しろがねが言う洞窟だけど。 領地化の過程で探索した時には、それらしき物は無かったと思うけど? 」


『それはね、封印されているからなのよ。 まだ結界が有るから認識出来なかったのね 』 


『さよう、普通の者には発見できぬよう結界が張られておる。 

少し鍛錬を兼ねてそちらを通る故、装備と覚悟を持って望むのが良かろう 』


「シロ君? 鍛錬って 」


「もしかして何か出るのか? 」


『サトル兄! そりゃ~普通に魔物が出るよ。 

でも大した奴は出ないから、準備運動レベルかな~ぁ? 』


「準備運動って……言ってもなぁ 」


『そうね、先ずは実際に魔物を視て、感じて、どんなもの・・かを確認するの。

今まで出会った事の無い生き物だから、落ち着いて攻撃が出来るか。

それが出来なければこの先はきついわよ 』


「確かに……まだ一度も見ていないからな。 どんな奴が居るの? 」


『洞窟内だと、蝙蝠バット蜥蜴リザード、スライムや百足センチピード蜘蛛マンティスヴァイパー位ね 』



「まんまRPGに出てくる魔物じゃないか! ゴブリンなんて居たら一寸厳しいかな? 

流石に人に近いとねぇ 」 


『うむ、地球のRPG等とは少し違うぞ。

この世界にはゴブリンやリザードマン等の人型の魔物・・・・・は居らぬ、動物などが魔力で変質したものが殆どだからな。

そう言った意味で言えば、命を奪う事への忌避感は少なくなると思うがな。

何れにしても戦う前に観察するのも必要な事、洞窟内前半はインビシブル等で姿を消す等の工夫をするのだな 』


うん? 姿を消すだけ。


白銀しろがね、例えばだけど蝙蝠バットが居たとして、インビシブルだけで見つからないの? 他の魔法も重ね掛けしたりとかさ 」


『うむ、確かにインビシブルだけでは見つかることが多々あるな。

したがって音響阻害系のサイレント等を併用する、それでも完璧ではないがな。

そこまで魔法を使える者も少ないのが現状だろうな 』 


「スネーク等の場合も同じかな? 」


『うむ、そうなるな 』


もしかして、この世界の人は魔物の生物的な特性を知らないのか?

それとも、地球の動物と生態や器官が違っているのが原因か?

地球の生物と同じだと仮定して考えれば……。


 蝙蝠が元ならば音響阻害で妨害するか誤魔化せるのかな?

暗い洞窟の中で障害物にぶつからずに飛べるのは、超音波を利用しているからだ。

喉から超音波を出して反射して来た超音波から、位置情報などの様々な情報を得ている。この世界の蝙蝠もエコーロケーションを利用しているなら……見えなくなるだけでは駄目な筈だし。

それとも超音波の代わりに魔力だけで感知しているのかな?


 同様に、蛇ならば赤外線や温度で獲物を感知しているし、蛇はピット器官、所謂赤外線感知器を持っていて、夜間など見通しが悪い中でも獲物である恒温動物の存在を察知している。

蝙蝠同様に魔物に変質しているから、魔力感知は当然あるだろうけど。


 対象によって対処が変わる筈なのに、もしかして知らないのか?

嗅覚、聴覚、視覚、触覚、魔力感知だけしか気にして無いみたいに思える。

多分だけど、生物学的なものが魔法科学のせいで遅れているのかも知れない。

他にも見方が地球と違うものは多そうだ。

だが、何を使えばいいのかが良く判らないな。

温度センサーと超音波の動態センサーを誤魔化すには?


そんな事を考えながら準備をするのだった。 


    ◇    ◇    ◇    ◇


ヘイムスリングの魔法についてだが、魔法属性は星「アストライア」で表されるそうで、ギルドカードに星の数で記載される。

一~十は単純に星の数で無限属性のみ 星を中心にメビウスリングが描かれるようだ。

一属性  モノ アストライア

二属性  ツイ アストライア

三属性  トライ アストライア

四属性  テトラ アストライア

五属性  ペンタ アストライア

六属性  ヘキサ アストライア

七属性  ヘプタ アストライア

八属性  オクタ アストライア

九属性  ノナ アストライア

十属性  デカ アストライア

無限属性 インフィニット アストライア 


 魔法属性には、火、水、地、風、雷、氷、光、闇、聖、魔の十属性があり。

無限属性は十属性を全て使える全属性の事を指し、無限インフィニットと呼ばれる。

 ただ、無限属性インフィニット アストライアは現在四名確認されているが、何れも現役の勇者だと言うことだ。

過去の勇者も無限属性インフィニット アストライアだったそうだが、三名は既に他界したそうである。


ただし、無限属性だからと言って全てが上手く使えるとは限らず、何かしらの属性へ偏る傾向もあるそうだ。

言い換えると、使えるかもしれないが、絶対に使える訳ではない。これは……微妙である。


沙弥華も俺も無限属性であった、これも遊者だから当たり前で、普通は二属性か多くても四属性あれば優秀だと説明された。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る