第21話 進み行く先は?

称 沙弥華さやかはお茶の準備をはじめた。

 

 囲炉裏に吊るされたケトルを見ると、湯は沸いている様だが半分程に減っていた。

それだけの時を話していた訳だ。

ケトルへ水を足し元に戻すと、沸くまでの間にお茶菓子の調理をはじめた。

 

 ホットサンドを作る時に、切り落としたミミを使ってお菓子を作るのだ。

作るのはパンミミを使ったキャラメルラスクだ。


手順だが。

 パンのミミを三センチ程にカットして、アウトドア用のフィールドオーブンを使かい、パンミミを乾燥させます。

時間があればフライパンでって水分を飛ばしてもよいですよ。

その作業を兄に任せ、次の準備へ。


 乾燥をお願いしている間にコーヒーの用意です。

四人分なのでフレンチプレスを使います。

 コーヒー豆を中挽き・・・にしてフレンチプレスに投入。

お湯を半量注ぎ三十秒蒸らした後は残りのお湯を注ぎます。

プランジャーを上げた蓋をして待つこと三分三十秒、プレスして出来上がりです。

豆をいた後の作業はリリちゃんにお願いして次の作業に向かいます。


 深底のフライパンへ牛乳、バター、三温糖を入れ火に掛けます。

砂糖とバターが溶けてきたらシリコンベラで焦げ付かないように混ぜ、泡立ちはじめたら火加減を中火に落とし、更に煮詰めます。


好みのキャラメル具合になってきたら、乾燥させたパンミミを入れてキャラメルを絡め、クッキングシートに並べ粗熱あらねつを取って完成です。


 リリちゃんのコーヒーはエスプレッソカップに注いでます。

GSIの丸い可愛いやつです。

シロ君は深目のソーサーにホットミルクを多目にしてます。

四人分のコーヒとキャラメルラスクをテーブルに並べ、美味しく頂きました。


    ◇    ◇    ◇    ◇


 一息つきながら白銀しろがねから話しの続きを聞いていた。


『先の続きだが、意識しない状態と意識した状態での差は見てもらった通りだが、でどの程度の防御力が有るかについてだ。

先程の我の攻撃は、通常攻撃で魔陣まじんなどは使っておらぬ。ただのスキルに過ぎぬ技だ。

従って、通常の防御結界などで防ぐ事も出来る。其れなりに鍛錬を積んだ人種の技レベルの物だ。

と言ってもピンと来ぬだろう。 御主らの世界で言う達人レベルの技だな 』


「達人レベル? 」

『そうだ、御主らの世界と此方の世界では計る基準、物差しが違うのだよ。


 此方の世界では魔法が当たり前にある、しかし御主らの世界にはマナは有れど使い手がおらぬ。

それ故に技の威力が元々違ってくるのだ。常に魔力を意識して鍛錬している者は、基礎能力からして上がり易いのだ。

生まれたばかりの赤子ならば差は出ぬが、時を経るに従い差が顕著になるのだよ 』


「シロ君、地球の達人レベルの技は、この世界の普通の人にも効かないと言う事なの? 」


『そうでもあるし、違うとも言える。

魔力を使わずに相対すれば良い勝負になるやも知れぬが、魔力を使われると傷一つ付けられぬだろう 』


「なら、自分達は一般人で鍛錬などしていないよ。 元々の素地が悪いって事じゃないのか? 」


『本来ならそうなる。 しかし御主ら兄妹ふたりは恩恵を受け称号・・を有しておる。

それからして同じ物差しでは計れぬのだよ。


 遊者・・とは言い換えれば勇者・・の同意語なのだからな。

あえて違いが有るとすれば、勇者よりも汎用性に富んでおる事だな。

勇者は戦闘に特化した称号ゆえ、他の事は得意ではないし使えない事も多い、仲間有っての称号ゆえだな。

 しかし遊者は同等の力を持ちながらも、一人で生きていく事、遊ぶ事に特化しておる。

ようは「我の遊びを邪魔するのは許さん!」と言う程の、我侭を通せる能力を有しておるのだよ 』


「シロ君、それってただの遊び人って事じゃ、まるで金さんみたいよ 」


沙弥華さやか、白銀に金さんはわからないだろう? 」


『金さんとやらか、普段遊んであざき、本来は切れ者の施政者だったか? 』


「シロ君? 金サンわかったの!? 」


『うむ、知っておるぞ! 沙弥華さやか殿の自室のコレクションを視聴したゆえな。

あれは中々に良い話だったぞ。 まあ、違いはあるが遣りたい事を遣る為の力は持てる・・・と言う事には変わらぬか 』


「いやや、金さん違うでしょ! 要するに鍛錬次第で勇者並の強さが得られるって事かな? 」

『そう言う事だ。 御主らの恩恵と称号は強力ゆえ、大概の事は何とでもなる筈だがの 』


『その為にも、力を使える必要と知る必要もある。

まず、この世界でも称号を複数持つものは殆ど居ないのだ。 

その辺はリリスから説明させよう 』


『はいなのです。 称号についてですが、マスター達の世界ではお馴染みの、物語に登場する物と、殆ど同じものと言う認識で良いかと思うのです。

えて違いを上げるのなら、この世界の称号は系統によって進化の先があるのです 』


「系統と進化? 」


『例えば、マスターの称号は「遊者、繋ぐ者、開拓者、探求者、技巧士」の五つです。

 沙弥華さやか様の称号は「遊者、護る者、探求者、練成士」の四つですね。


 特殊称号は「遊者」ですがこれは白銀しろがね様が仰ったように、勇者と同じと考えて頂いて構わないのです。

普通は「遊人、道楽者、怠惰な者」など、ろくな者しかならない称号なのですが、最上級の遊者のみ特殊称号になるのです。


 例えば探求者ですが、これは特殊系統の称号で、更に上級へ派生する可能性があるのです。

探求者は深淵の到達者、更に先もありますが、それはそうなった時に説明するのです。


 それぞれの称号は、修めた経験や環境に試練、鍛錬などにより上級に派生する事もありますが、一般的にはあまり起こらない現象となるのです。

マスターの達は特殊な称号が多く、補正効果で上位開放される可能性が十分あるのです』


『と言う訳で、御主らには鍛錬をして貰おうと思って居るのだがな。

なに、死ぬような鍛錬ではないぞ。(多少は怪我もあるやも知れぬが……)』


「と言う訳で……じゃないよ。 鍛錬てなに? この世界を楽しめって 」


「私はお願いするわ! 」


沙弥華さやかさん? 」


「お兄ちゃん、これは意味のある事だって思うの。 何故かは……上手く言えないけど。

やらなきゃいけない事だって…… 」


「何と無くだが……わかる気はするけど…… 」


流石は沙弥華さやか殿だ、何と無くではあるが察しておるようだな。


「お兄ちゃん!」


「……判ったよっ! 沙弥華さやか一人にやらせる訳に行かないからな 」


兄妹ふたりとも良いのか? やるからにはハンパはさせぬぞ! 本気と書いて「まじ」だぞ!』


白銀しろがねさん……最近は嵌って読んでるからな。


「了解だ。 よろしく頼むよ。 リリスもフォロー頼むよ 」


『マスターお任せなのです! ピシピシ~ッ! と鞭を振るうのです 』 


「ちょっと? リリスさん何を言っているのかな? 」


『さて、ならば少し裏技を使おうかの。

そんな心配そうな顔をせぬともよい。 補助的な魔陣を組むだけよ 』


白銀しろがねがそう言うと、俺と沙弥華さやかの足元に魔方陣が現れた。

淡く温かい光に包まれたかと思うと、身体の中に何かが染込んだ気がした。

嫌な感じはなく、何と言うか……フワフワした感じだ。


『違和感はあるか? 無ければ問題はないが 』


「シロ君、これは? 」


『うむ、魔力体へ負荷と加速を交互に架ける事で、習得速度と錬度を上げるサポートをしてくれる術式だが。

他に回復も補助してくれる、便利だが燃費が少々悪い。

まあ、御主らの魔力量なら問題は無いレベルだがな 』


「シロ君、問題は無いようだけど 」


「こっちもだ 」


『うむ、この術式はあちらの世界でも効果がある、普段の生活の中でも鍛錬は可能ゆえ、怠らぬようにな。

余りにも倦怠感けんたいかんなどが出た時には言うのだぞ、無理は逆効効果になるからな。

訓練の方法は後ほど伝えよう 』


 時間を見ると、既に夕方だった。

早々に夕食を済ませ、皆で温泉に入った後は色々とあって疲れたのか、布団に入ると朝まで寝てしまった。

実は、何時いつまでも寝袋ではと、人数分の布団は既に持ち込んであったのでした。

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