第9話 想像以上に危険だった

 昨日と同じ場所へ目的地設定をし車を走らせる。


暫くすると『間もなく転移します』とアナウンスがあった。


テストがやり易い場所として、的の後が開けた場所を探しながら移動する。


「ここなら良いか 」


 車を停めて支度を始める。

作業がやり易い様にテーブルと椅子を組み立てる。

テーブルと椅子はキャンプ用の小型の物だ。

 

テーブルトップは竹製で、二つ折りにされた天板を開くと脚が連動して展開する便利な物だった。

 

 椅子はテント用のジュラルミンフレームを作っている、大陸系メーカーの物で座面が回転できる。

元々が、米国の狩猟関連団体の要請で開発された物で、座ったまま体の向きを変えられるのが便利だ。

軽量、コンパクトで愛用者が多くキャンパーやツアラーに人気がある。


何れも父のコレクションだったりする。


 自宅から持って来た大小三個・・・・のケースを、車から取り出しテーブルの上へと置いた。

置かれた物は黒い樹脂製のガンケースだった。

 

その中に入っていたのは、


樹脂製ポリマーフレームのオートマチックピストル 

G-17カスタム  フラット・ダークアース


樹脂製ポリマーフレームのPDW《パーソナルディフェンスウェポン》 

H&K MP7A1 に サプレッサー

 

金属製のフレームとフルートバレルがウッドストックに装着された、 

ルガー10/22 スポーターライフル 


の三種類。 当然本物では無くガスで作動するエーアーソフトガンである。


 持ってきた物は所詮は玩具おもちゃであるが、基本性能拡張、強度拡張による効果を確認するのが目的だ。


 電動ガンも持ってはいるのだが、ガス作動の方が手軽に試せるので三種ともガスガンにした。

雨による水濡れでショートすれば使い物にならないのでは? との危惧もあっての事だが、何れはその辺も確認する必要が出てくると思う。


「リリス、基本性能はどの位強化されているのかな?

 何れも実銃のあるモデルを持って来たのだけど。

例えば、本物の威力に近くなると言う認識でよいのか、それとも持ってきた玩具その物の威力をベースに強化がされると言う事かな? 」


『持ち込んだその物の威力をベースに強化されます。

曖昧で申し訳ないのですが、マスターのイメージに準所する様な感じと言えば宜しいのかと……。

先ずは実際に試して頂ければ…… 』


試さないと判らないって事だね……。


 試射するために的を用意した。

用意しておいたスチール製の空き缶と、レンガを数個十mほど先に並べてみた。

 なぜ十mか、本来の「ガスガン」の性能だと辛うじて当たる距離で、且つ当たっても缶は倒れない。


 先ずは有名なポリマーフレームのハンドガンG-17カスタム。

箱出しでは無いが、インナーバレルとバルブカスタム程度の物だ。


 マガジンをセット、スライドを引き初弾をチャンバーに送る。

ターゲットに銃を向け引き金を引く。


 ボシュッ!


樹脂製の弾がターゲットに向かう。


 ガシュン!

 

とスライドの動きと共に次弾が装填されたが、反動は玩具のままだ。


 ビッシ!


と言う音と共にスチール製の空き缶が中を舞った?


それを見て「へっ? 」と変な声が出てしまった。


走って空き缶を確認に行く。


 其処には目を疑う現象が。

空き缶には貫通した穴が開いていた。

僅か六mmの樹脂製の弾が十m先のスチールの空き缶を貫通し吹き飛ばしたのだ。



 H&K MP7A1 ポリマーフレームのPDW《パーソナルディフェンスウェポン》でセミオートとフルオートを切り替えられる。

一昔前の呼び方だとサブマシンガンの部類に入る。

 ストックを伸ばした後、コッキングレバーを引き初弾をチャンバーに送る。

セレクターをフルオートに切り替え、ターゲットに向けると銃を構え引き金を引く。


横一列に隙間無く並べた五個の煉瓦に向け引き金を絞る。


シュタタタッン!


発射音と共に樹脂製の弾がターゲットに発射された。


ビッシシシシッ!!!!!


 着弾と共に砕け散る煉瓦。

先程と同様、ガスガンでは有り得ない結果が目の前に四散し・・・転がっている。


「マジか……」


 最後はライフル。ルガー10/22 セミオートのガスライフル。

装備されたバイポッドを開き椅子に腰掛けたまま構えた。

テーブルをレスト代わりにして固定するとスコープを覗く。


二十m位先だろうか? 太い木の枝の根元を狙う。

リリスは『イメージすることで強化を補助』すると言っていた、枝の根元が吹き飛ぶ様にイメージしトリガーを引いた。


パッシュン!


発射音の後、目標の木の枝が根元から折れ・・・・・・落下して行く様をスコープ越しに眺めていた。


少し、眩暈がした。

 

これは殺傷能力が十分にある。

人に向ければ……言うまでも無く命を奪うだろう。


これが夢やゲームなら所詮空想の世界の事だからと、躊躇う事も無く引き金も引けるだろう。


 日本で極普通に生活していれば「命を奪う覚悟」なんて物は持ち合わせる筈が無い。

狩猟者であれば動物の命を糧としたり、害獣駆除として命を奪う事も有るだろう。

だが、自分は違う。きっとそんな覚悟を持てないだろう。


 じゃあ、この幸運にも似た現状を忘れて日常に戻れるかと言えば……否だ。

暫くは我慢出来るだろう。


しかし、知ってしまった。 人の手が入っていない大自然と其処に在る魅力を。

日本で生活していたら……手にする事も叶わないであろう巨大な魚達。

きっと凄い冒険も待っているだろう。

それと同じ位の危険も在るかも知れない。

覚悟…… 無理だろうと思うけど、身を守るための準備はしよう。


先ずはこの世界を冒険をしてみようと思う。


そうして一番大事な事を先送りにした。

後悔する事になるとも知らずに。

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