最終回ETERNAL HORIZON

夜河が岸森捜索に出て、2時間くらいが経っていた。


霧は大分薄くなり、車でも危なくなかった。


「あいつもかなり訳ありみたいだったな……犯罪に巻き込まれてなきゃいいが……」


ある広場に出た。奥はまだ霧が深い。夜河は車を降りた。


広場の敷地に入った途端、景色が変わる。ここは!?まさか母さんが入院していた病院?


自分はいつの間にかブレザーを着ている。時間は夜8時……間違いない母が亡くなる直前だ。


夜河は慌てて、母の病室に向かう。入口を荒っぽく開けると、男性の医師と看護婦が2人、母を囲んでいた。


「母さん!」母はまだ意識があった。「満男ごめんね……ありがとう」そう言って母は目を閉じた。


「8時12分、ご臨終です」


今迄の人生で一番思い出したくない場面だ。それでも焼き直しのように布団にしがみつき俺は号泣した。一生分の涙を流し尽くした。


気付くと、広場の敷地の外に出ていた。夜河は涙を拭い、車に戻る。



岸森はハッと目を覚ます。隣りにいるレッドが「やっと目を覚ましたな眠り姫」と言い岸森にリュックサックを渡す。


岸森はきょとんとしてる。「また旅立つんだろう?君はバックパッカーだもんな」ブルーは煙草に火を点ける。


「イエロー車を止めろ、岸森明日菜、君は開放だ。ちなみにどこ目指してるんだっけ?」レッドはサングラスの奥の瞳を輝かせる。


岸森はエンジェルスマイルを浮かべ、「もちろん、この世の果て……」




黒い3台のバンを見送って、「あの人達悪役なの?善玉なの?よくわからない……まあいいや、夜河さんと合流出来るのかな?」


岸森明日菜は再びさすらいの旅路を歩き始めた。





小学2年のベータは駄菓子屋の前でウルトラセブンカードにするか、仮面ライダーカードにするか悩んでいた。なんせ所持金は100円だ。


「ベータもまだ幼いな、買うんなら長嶋カードだろ……」ベーヤンだ。カードに関しては君には敵わん。


「さあさあ、大団円よ、駄菓子屋は閉店します。」崎守女史は店じまいを始める。


「おばさん、慌てんなよ」ベーヤンは野球帽を逆に向けて走り去る。


「会場はどこですか?」ベータは崎守に聞く。崎守は駄菓子屋の奥の公園の方を指さす。


ベータが公園に入っていくと、そこはいつかの金属セットだった。


愚蓮京介と広永玲子が楽団を従いながら手をつないで踊ってる。


崎守叶香と修羅悦郎も手をつなぎ踊り始める。


ベレー帽の男が旗を振り先導する。ダンスパーティーと化していた。


ベータは36歳に戻っていて、ディレクターチェアに座り、キンキラキンのパーティーを眺めてる。


ふと、空を見ると流れ星が一つ落ちた。ベータは慌てて”平和が続きますように”と唱える。





離れた灯台から我道幸代は双眼鏡でパーティーを見ていた。「懲りない人達だなあ」


我道も流れ星に気付く。”センセと結婚できますように”……。





今日も新しく希望に満ちた朝日が昇り始めてる。


岸森明日菜はあくびをしながら歩き続ける。


約束事のように後ろから車がやってくる。


「お嬢ちゃん、”この世の果て”行きのリムジンはいかが?」


岸森はまたあくびをして、「遅いよー、お腹空いちゃった」


また新しい永遠のファンファーレがこだまする。


(完)


2016(H28)4/19(火)・2019(R1)11/21(木)

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る