第19回ミステリアス・ライトニング

まずブルーはレッドに向かいこう言う。


「準備は万端なのか?」


レッドは「そうとも言い切れない」


ブルーは無精髭に触れながら。


「予断は許されない、既に時計は58分から59分にならんとしてる」


レッドは「このままだとまずいのはわかる」


グリーンが口を出す「ブラックにどう説明する?」


「ブラックの前にゴールドにどう言うか考えないと」ピンクが憤慨する。


「シルバーとブロンズもだまってないぞ」グリーンがピンクに向かって言う。


ピンクは「ヒー達は部外者だ」


「部外者?よく言う」グリーンは煙草に火を点ける。


「ヒー達は君ほどこだわりがない」ピンクは口元を歪めて微笑む。


ブルーは手で制して「ブラックには私の方から言っておこう」


ブルーはレッドに「本当に岸森明日菜を降臨させるつもりか?」


レッドは「死んでるわけじゃないんだから、降臨って言葉はおかしいな……」


「この場合降臨としか言い様がない」


「ふむ」レッドは頷く。


ブルーは全員に向かって「とりあえず、余裕がない、時間との勝負と思ってくれ」


全員頷く。




8月1日(金)


朝7時半に伊藤シャドウは目を覚ました。今日から1ヶ月の謹慎処分。2学期には間に合うじゃないか……。


学校の連中にも我道との仲は知られてるわけだからな。てっきりクビかと思った。まあ知られて困るようなら堂々街中で会うわけもないか……。


隣りでは我道がすやすやと寝息を立ててる。彼女の髪のふわっとした感触を確かめる。顔を覗き込むとすっかり安心した様子で寝てる。18歳だもんな。まだ子供扱いされてもおかしくないはず。彼女は身の丈以上の自分のポテンシャルに苦しんでるのでは?でもそんな様子もない。末恐ろしいね……。


伊藤シャドウはポテトとベーコンを炒めて、ポタージュスープも同時進行で作る。そのうち我道がまたシャドウのシャツに下着姿で起きてくる。


「だから、そのカッコやめろって」


「何恥ずかしがってんの?不良センセ……」


まあな、不良センセと言われればそうだが、人のこと言えんぞ実際。


「なんか香ばしい匂いね」


「ああ、朝飯にしよう」


あああ~と欠伸をするシャドウ。


「センセ昨日眠れたの?」


「まあね。5時間くらいは眠れたんじゃないか?」


「でもこのポテト炒めおいしい」


我道は幸せそうに微笑む。やっぱ18歳だ。こんな子供の様な微笑み方初めて見た。




夕方になって、本城ベータはいい加減冷房に浸かり過ぎて、気分が悪くなってきた。暑いけど外に出よう。


案の定、外はサウナだ。タオルを羽織って気合を入れ直した。


日高屋でニラレバ炒め定食を食べ、久々に酒でも飲みたくなってきた。バー”リデル”へ向かった。あそこライティングがチカチカするが、カクテルは旨い。


久々に来る”リデル”はやはり強烈。バックにはドアーズの曲が流れてる。カウンターには長髪の女性じゃなくて我道じゃんか!


「オス!」


「ああ、センセ」


「見たぞ、見たぞお前の彼氏。大学生か?随分とカッコイイの捕まえたな?」


「大学生じゃないよ、うちの新任教師」


「新任教師?お前先生に手出したのか?」


「大人の関係よ」


よく言うよ、未成年のくせにこんなとこ出入りして


「ふーん、今時の新任教師ってあんなアイドルみたいなのいるのか?」


我道は黙って、ドライマティーニに口をつける。


ベータはオールドクロウのロックを頼む。


「センセ、明日菜戻ってくるかもよ?」


「荒野に旅立ったんじゃないのか?」


「神はきまぐれみたい、あくまで裏情報」


「お前もなんか得体の知れんコネクション持ってそうだもんな……」


「センセは明日菜のこと好きなんでしょ?」


「う~ん、まあね」


「犯罪だけどね」


「お前人の事言えんじゃん」


我道はプロのモデルのような微笑んだ表情を向ける。


「はは~ん、お前のその表情だけで、大概の男はやられるぞ」


あのイケメン新任教師は年の頃20代前半。美男美女カップル目立つよな。


「センセ話は違うんだけど、今日センセん所へ泊めてくれない?」


ベータは酒を吹き出しそうになる。


「お前さあ別にいいんだけど、ちゃんと恋人いるのになんで、男やもめの俺の家に泊まるなんて発想が出てくるの?」


「なんか、彼一人の時間が欲しいみたいで」


「お前実家には帰ってないのか?」


「私んち?ああとっくに家族崩壊してるから……」


この半年くらい色んな所に泊まり歩いてるのかね?そこまでは聞かんが……。


「別にいいけど、安全は保障されんぞ……」


我道は顔を揺らしながら笑ってる


「笑いごとじゃないと思うんだけど?」


「ちなみにセンセ柔道何段?」


「柔道?9級とかじゃないの?」


「私五段……七段の人に勝ったことあるけど……」


「わかった、わかった、俺はむしろお前にボコボコにされないようにしてればいいんだな?」


「そういうこと……」


勝ち誇りやがって、柔道五段ね……殺されかねんわ。


2015(H27)5/11(月)・2019(R1)11/12(火)

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