第44回ドライヴィング・イントゥ・スターダスト
外灯がまったくない山道を車のライトが2本のランプを灯したように進んでいく。
短髪の彼女は20分もあれば民宿に着くと言っていたが、既に30分は過ぎてるように思える。
「そういえば君名前は?」
彼女は数秒間を置いた後「土方キョウと言います」と言った。
「キョウはどう書くの?」
「別に京都の京でもなんでもいいけどカタカナでいつもやり取りしてるわ」
「ふうん」
キョウは前を向いたまま「あなたの名前は?」
「本城ベータ」
「ベータ?」
「部屋の部に太郎の太でベータと呼ぶ」
「珍しい名前ね」
「よく言われる」
「ふむ」キョウは確認するように一呼吸置く。
「ちなみにさこの道って前から車が来たらアウトだよね」
キョウはそれには答えず、黙ってる。
これは答えてくれると思うんだけど「ここは日本のどこなの?」
「はあ?」キョウは呆れた声を出した
「それくらい教えてくれるでしょ」
一瞬彼女の瞳に光が透けたように思えた。気のせいか。
「ここはこの世の果てよ」キョウはやけに乾いた声で言った。
よく映画とかに出てくる言葉だ。この世の果てか……考えてみれば天国口高校も同じようなもんだったよな。高校教師というのも選択肢としてよかったのかどうか?今となっては何とも言えん。もう何もかもどうなってもいい。変な場所に移動してるというか拉致されたというか、投げやりな気分。
「夏の割にひんやりとしてるね」
「そうね、特に今日は……」
そういえば星空が綺麗だ。
星空のもと美女とこの世の果てでドライヴ……贅沢だなあ、なんか麻痺してきた。
美女がいて当り前モードは慣れたくない。大体恋人もいない男がなんでこうなるの?
目の前に遠方の民家の灯りがチラチラ光った。どうやら民宿に着いたようだ。
キョウは左にハンドルを切って、砂利道を奥に進み、車を止めた。
「さあ着いたわよベータさん」
「おす」
民宿の入口へ向かう。入口が見えてきて、長身の男が仁王立ちしてシルエットを作っていた。
何か見覚えのある体格だな。
2014(H26)7/4(金)・2018(H30)5/22(火)
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