Second プロローグ1 序



            *  *  *







 とある城の謁見の間。



 カツン、と磨かれた石の床に打ち付ける靴音がした。

 ビクリと震える身体を抑えながら平然を装って前を見据える。後ろ手に縛られ動くことはできないが、それでも気丈に構えた。誰が来ても何があっても受け止められるように。


 目の前の台座―――三段ほど上にある豪華な玉座にこれまで自分をずっと追いかけ、捕らえに来た兵士たちの黒幕がようやく座る。

 黒く短い髪。

 こちらを射抜くような朱い瞳。左の眼に一本だけある縦の傷跡。

 人形のように整っている顔立ち。

 その男は足を組み肘をたてるとこちらを見た。そして―――ようやっと口を開いた。


「……初めまして、かな。こうやって君と会い、話をするのは」

と。






          * * * * *






 とある街道の通り道、宿場街のとある宿屋一室にて。

 いなくなった少女の荷物や相棒である白翼猫ブランリュンクスを見た青年が、ようやく決意を胸にした。


「どうしたのにゃ、こんなところでなにを―――っ!!?」

 一緒に連れ立っていた猫の獣人族の青年が入ってきてなかの様子を見た。そしてなにがあったかがわかったらしく、険しい顔をすると隣の青年に問いかける。

「………拐われた、にゃ?」

「……」

「どこに行ったかわかるのにゃ? 手がかりはあるのかにゃ?」

「……」

「っどうするつもりでいるにゃ!? もしあの娘が―――」

 いっこうに答えない様子にだんだんと荒く荒んだものになっていく。しかしその言葉を、

「黙れ」

 青年―――ディックが遮った。

 あまりのものの言い方にムッとしたが、猫の青年―――グレイは口をつぐむ。

 なぜならディックの表情が   だったから。




 その表情のままディックは言った。胸にした決意と共に。

「先にエンデリアに向かう。俺のやるべき事が終わってからだ、あいつを拐いにいくのは」




 ディックの顔に浮かんでいたのは〝無〟。そして―――
















             ―――第二部へと続く。

https://kakuyomu.jp/works/1177354054886257685/episodes/16816452218772643258 

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王国戦記~不死鳥の乙女は蒼空を舞う~ 終焉の始まり編 薄紅 サクラ @Ariel191020

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