150話
熱い。とにかく熱くてしょうがない。踏み出したはいいがとにかく暑い。
アツアツに沸騰したお湯より。
地下にあるといわれる暑く赤い液体より―――この部屋を燃やす炎の方が、それ以上に熱い。
身体中の毛という毛に火がつきそうなほど熱い。このままでは周りから火が移って、全身が焦げ付きてしまいそうなほどに。
いや、実際に周りの火が身体の毛や服に移ってきそうになっている。だが動く直前に気休め程度の抵抗魔法を使ったおかげか、薄皮一枚の差で食いつないでいる状態で。
今はまだ服ごと燃えたりしないから安全だろう。けれどそもそもグレイはあまり魔法は得意でないから、いつこの気休めのものが壊れてもおかしくはないのだ。
だからどうにかして少女の側に行く必要があった。何か何でも、例え魔法がこの炎に耐えきれずに壊れて消えようと。
消えて火傷を負うことになったとしても少女の側に行かなければと強くそう思う。今この瞬間に伝えるべき言葉を彼女に伝えるためにも。
グレイは唇を噛んで次の一歩を踏み出した。
* * *
―――・・・・・ガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァンンンンンッッッ!!!!!!!―――
地面が揺れるほどの爆発音がまさかのホールの方向から聞こえてきた。それも揺れで一瞬だけ身体が空中に浮かぶくらいの大きな
普通であれば地面が揺れてもそのおかげで浮いてしまったとしても、少しくらいはまぁ大丈夫なもの。
だが、
「ひゃわぁっ!?」
エレミアは違う。人混みに加えて飛ぶのも苦手な彼女は、ほんの一瞬だけ身体が浮き上がっただけで怖くて涙が出てしまう。
浮游恐怖症というべきか高所恐怖症というべきか。要するに両足が少しでも地面から離れただけで怖いと思ってしまうのである。ちなみに彼女は泳ぐのも苦手だ、なぜなら体が浮くし水が怖いからである。
そんなこんなで。
エレミアは涙目になりブルブルと恐怖に震えながら、それでも今の大きな音はなんだったのかと考えるのをやめずにいた。・・・思考のほとんどが「怖かった!」などで埋め尽されていたが。
外にいたエレミアの周りでも、今の揺れと大きな音でたくさんの者たちが騒然としていた。
「なんだなんだ?」
ザワザワと騒ぐ者。
「今、すごい地面が揺れてなかったか」
「音も結構聞こえて来たよな」
原因を探ろうとする者。
「揺れてるし大きな音もするし、なにこれ怖~〜い」
きゃあきゃあと同性同士で悲鳴を上げる者―――。
彼ら・彼女らの反応はさまざまだ。先程まで訓練や練習をしていたが、その手を止めて話をしている。
しかし小さかったその火種は少しずつ大きくなり、やがて思い込みだけで"ああではないか""こうではないか"と話に背びれや尾ひれが付くようになった。
―――その喧噪や騒ぎが大きくなっていつか爆発するのではないかと思った、その時。
一人の冒険者がこの場にまで走ってくると大きな声で叫んだのである。
「っ大変だ! 代表の部屋から火の手が上がってるぞ!!」
と。
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