137話
―――『……裏切り者、ねぇ。そう呼ばれてもしょうがないわよね』
クスクスクス・・・と紅い髪の少女が心底楽しそうにまた
決して相手を馬鹿にしているわけではない。だが浮かべているその嘲笑は毒女どころか悪女の笑みのようで―――思わず眉を潜めたくなってしまう。こちらが
とはいえこのような徴発に乗るのはいささかよろしくない。かえって相手を楽しませるだけだからである。
・・・だがスティーブの方はそう思わなかったらしい。
「………どういう意味だ?」
ムッとした表情を浮かべて実際にそうかは分からない挑発に乗ってきた。どうやら馬鹿にされたと思って苛立ちを隠せないようだった。
されどそれすらも少女にとってはたのしい余興のようなものの一つにしか過ぎなくて。にっこり笑って黙ったまま返答を返すことはなかった。
仲間だった敵のそんな姿を見て、グレイはふと思い出したことがある。そういえばこの男―――こうも挑発にのりやすいタイプだったかと。
確かに物事が上手くいったときや何かを成功させたとき、この男は機嫌がよくなってすぐ調子にのったりすることがあった。また相手から挑発紛いのことをされた時は逆上したが、わざとだとわかるとすぐに気持ちが落ち着くような男だった。だからここまで苛立ちを隠せないような奴ではなかったはずだ。
これは一体どういうことだろうか?
考え込む間にも苛立ちは容赦なく蓄積されていて。おかげで表情は非常にわかりやすく、イライラと眉をギュッと寄せて怒っているのが見えた。
それでも少女は嘲笑うのをやめない。どころかさらに笑みを深く浮かべたりわざとらしくため息をついたりと、あえて敵を煽るようなことばかりし始めたのだ。
―――そのおかげでついには。
「その馬鹿にした
我慢の限界がきたスティーブが、片手剣を大きく振りかぶった。黙らせるために彼女の頭上にめがけて。
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