72話
言葉の矛先が自分と気付いたのは、それから数分後のことだった。
「…………………にゃぁ?」
足を止めたグレイは素早く周りを見渡す。すぐ近くで声がしたのだ、まだいるのかもしれない。
―――自分に声をかけた人物が。
だがここには自分とその
けれども声はこの耳に届いた。自分たち以外に誰もいないはずなのに―――だ。
空耳、だったのだろうか。あるいは自分の聞き間違いだったのか。
―――いや、自分には確かに聞こえた。名前だって呼ばれている。すぐ近くでそれはちゃんと聞こえていた。
嘘や幻なんかではない。自らの本能と自信をもって言える。―――あれは間違いなく現実のものだったと。
・・・であれば、だ。
声をかけたのは一体―――何者なのか?
言葉の意味合い的に敵ではないのだろう。こちらを確認するような意思が端々に感じたから。
しかし逆に怪しい人物の可能性だってある。姿が見えない以上、こちらからは敵か味方かもわからない。そしてその限りはどう対処しようにもできないのが今の現状だ。
思考を巡らせていたグレイだったがそれは
―――『どうか私と一緒に、あの子を探してくれませんか?』
凛とした高くもなく低くもない声とともに。
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