65話






 全ての買い物を終えて果物店の外に出ると、すでにもう日は頂上へ昇っていた。今日は雲1つない晴れた空で、じかに太陽の熱がジリジリと伝わってくる。おかげでこちらがうんざりするほどに、とても暑い。

 大通りに構える店のほとんどが活気のある朝の市場を閉じ、賑やかな昼の市場に変わっていた。微かに美味しそうな匂いや甘い匂いが風に乗って漂い始めている。

 大通りは今や朝とは違った盛況を醸し出していた。




 ―――少し耳に聞こえるか聞こえないかぐらいだが、食事を求めるかのようにお腹の音が鳴る。どうやら空腹だというのを身体が教えてくれたらしい。

 恥ずかしくて赤くなった顔を隠しつつも、レイラは昼市で賑わう大通りに足を踏み入れた。



 入った瞬間、押し寄せてくるのは商売の熱気とあちこちで飛び交う声。

 何かを焼く音とパチパチと火花の散る音。そして―――美味しそうな料理の匂いと甘いお菓子の匂い。それが風にのって一気に彼女の身体を通過していく。

 いい匂いが食欲をそそる。もう一度お腹の音が鳴りそうだ。


 あまり長居はできないが、だからといってこのまま帰るわけにもいかず。

「……帰りがてらだけど、なにか買って食べようか。怖いかもしれないけどもう少しの辛抱だからね、スカイ」

 怯えるスカイの頭を撫であやしてやると、レイラは歩き出した。

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