チャチャVSおとうたん ファイ!!

カーン!と今日もゴングが鳴る(気がする)


チャチャは体が大きく知らない人には野生の凶暴さを示すけれど、家の中では大変な甘えん坊。しかし、それは私と息子に対してだけなのだ。


何度も書いているけれど夫の一声で我が家の一員になったチャチャ。それなのに夫に対してだけは「そんなこと、知らねえ」とばかりの横柄な態度を取るのだった。


甘えん坊チャチャは私の後をついて歩く。息子が大好きで声が聞こえると走って行ってお腹を見せて「撫でて」アピールをする。


猫ってお腹を撫でられるの嫌いなんじゃなかったの?チャチャは大好きなのだった。ただし、お父さん以外。


夫がチャチャに触ろうと手を伸ばすとスタッと体制を整えてプイッと後ろを向く。


「ど~して?だ~めですかあ~?」今日もおとうたんKO負けだ。


朝のごはんタイムだけは別だ。夫の足元にすりすりしてかわいい声で「にゃ~~ん」と鳴く。


夫も「ふう~ん、ご飯の時だけそうやって鳴くんだ?ご飯欲しいだけだよね?後で撫でさせてくれるの?」と英語でぶつぶつ言いながらカリカリをお皿に入れる。



食べ終わる


逃げる


「……はあああ」


リビングまで走って行って顔をぺろぺろ舐めてる。


めげずに夫が「おいしかった?」と近づいて頭を撫でようとすると、ひょいっと頭を引っ込めて、またプイっと後ろを向いた。


「ひどいな、チャチャ」がっくりとうなだれる、おとうたん。


「え!ちょっと待って!猫は野生の名残で敵に後ろ姿見せないって言ったでしょう? ほらここに書いてあるよ(ぐいっとスマホを夫の顔に近づけつつ)後ろを向くのは信用してるよという表現だって!敵には隙を見せないんだって!」


「そうだったの?チャチャ」ちょっと立ち直った、おとうたん。


チャチャの後ろ姿がものすごくビシッとしている。そして耳だけピーンとこっちを向いている。


たぶん、もしかしたら、だけど。


夫のことをこの家の「」だと思っているのではないだろうか?森の王みたいな。


私の膝でにゃふ~~んと甘えていても、夫が来るとさっと降りてビシーッの体制になるからだ。それともおっさんにこんな姿は見せられないというプライドか?


確かに夫の威圧感はすごい。183センチでプロレスラーみたいな体格だ。軍を引退して、さらにでっかくなり、しばらくは顎髭まではやしていた。


「ザンギエフ」もしくは「ロシアのクマ殺し」とあだ名をつけてあげた。声もものすごく低い。猫は低い音を聞き取れないという。


「ロシアのクマ殺し」が口を開けてせまってくる(チャチャちゃん♥と言っているけど低くて聞こえない)でっかい手が頭の上に伸びてくる。


それは怖かろうと思う。


信用はしている、でも王様(おっさん?)は怖い。


なので背中をまっすぐにして後ろを向かねば!そして耳だけは後ろに向けよう。と言うことなのかもしれない。


「低い声聞こえないんだって、高い声出してみたら?」

「は?だって息子は?」


息子の声も夫にそっくりで、ものすごく低い。


でも息子は猫たちを見ると「ひいいやあああ~かわいい~~」と裏返るほど変な声を出すのだ。


今も「ああ~チャチャ~かうわいい~~」とうわずった声が聞こえてくる。


夫よ、あれが動物に好かれるコツだと思う。


プライドをかなぐり捨てて、できるだけ高い声で呼ぶのだ。赤ちゃん言葉で話しかけるのだ。そしてお腹に顔を埋めるのだ。


「ほら、にゃああ~~ん♡チャチャ~~~ちゃ~~ん♡って言ってみて」


「で、できないよ」


夫もチャチャもお互いにプライドが高すぎるのかもしれない。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る