距離は近づく

第53話 凝視

『……赤は……グレープの嫌いな色じゃん……だから絶対勝つ!』

フルルのあの優しい言葉が頭から離れない……

だからかな……


僕はこんなにもフルルを見てしまう。


「みんな、まずは踊りを練習するわよ!」

「分かった~」

練習中なのにフルルを見てしまう……そう、外の世界でフルルパネルを見てた時の如く!


「「「「「~♪」」」」」

みんな鼻歌で踊りの練習をする。

……フルル少し遅れてる?まあそこが可愛いんだけどプリンセスに怒られたりしないかな……?フルルが心配!

「次に進むわよー!」

ってもう次のステップ!?

「何してるのよグレープ!遅れてるわよ!」

なんか……ごめん……

「ふわ~疲れた~……」

尻尾がぴょこぴょこ動いてる……あ、意外と尻尾大きい。

「クスッ おいグレープゥ♪」

え?イワビーがこっちに来る……

「フルルにみとれてんのか?」ヒソッ

え!?そう耳打ちされた……

確かにそう……バレたか……

「なんて言われたの~?」

(……内緒!)

「え~」


「踊りは完璧ね。歌の練習!まずはみんなで歌いましょう」

「「「「「ずっとずっと 夢みてる空を 飛んでみたいよ あしたは待ってる」」」」」

「きっと 夜がきて『おやすみ』」

駄目だフルルパートに意識が……

いつも通り可愛い声……のんびりが伝わってくる。

しかも歌が上手い。完璧……

「どうだった?」

あ、そっか。僕は歌えないから歌を聴く係か。

僕はしっかり頷いた。OKのサインだ。

「ふふっ、どっちを向いてるのかしら?」

あ、どうしよう、フルルに向かって頷いてた……もちろん全員良かったけど!

「ふふっ、グレープらしいわね」

フルルの顔は少し赤くなっていた。


「ソロ曲の練習!それぞれのソロ曲を歌いましょう」

「頑張る~」

やくそくのうたにずっと意識が……

「そばにいてね これからも」

(フルルありがとぉぉぉぉ……)

「えへへ~」

笑顔のフルル……もはや天使!

「フルル、歌上手くなったわね!」

「えっへん♪」

可愛いっ……!だから見てしまうっ……!ついつい見てしまうっ……!


「歌はもう完璧ね。最後に『人にやさしく』とバンドの楽器の練習で今日は終わり!」

フルルはドラム……


トトッ……トトットトットトッ……


……やくそくのうた!?

やくそくのうただよね?これ人にやさしくの練習……

「「「「「気が狂いそう」」」」」

あ、始まった……フルル、少し困り顔?あまり自信を持ってないのか?

でもめっちゃ上手い……もうドラムしか聞こえない……!

「「「「「聞こえてほしい あなたにも ガンバレ!」」」」」

フルルにガンバレって言われた……万歳!


「練習終了よ!お疲れ様!」

「お疲れ」

「お疲れ様です!」

「乙ー!」

「お疲れ様~」

こうして練習は終了したが……フルルしか見てなかった……


「疲れたー」

(フルル……)

「んー?」

(今日……ずっとフルルのこと見てたんだ……)

「……!えへへ♪一緒に寝よ♪」

唐突だが……僕も眠いし……

(寝るか。おやすみ~)

「おやすみ~♪」


ぎゅーーー



例えフルルばかり見ていたってフルルはすぐ許してくれる。怒るどころか笑ってくれる。

きっと……フルルの愛は嘘じゃない。

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