第23話 正体

「水が綺麗~!」

僕とフルルは今あんかけに『みずべがいど』している。

「がーいど!がーいど!みずーべがーいどー!」

「ここら辺から水飲めそう!」

「え~?そこの水しょっぱいよ~?」

「……しょっぱい?」

「うん!みずべちほーは海と繋がってるんだ!『サーバル達がそこから海へ行かなかったのは、最近出来た川だから昔からいたラッキービーストに情報が伝わってなかったから』だって!博士が言ってた!あれ?グレープと初めてじゃぱりまん食べたのもここら辺だっけ?」

「初めて食べたじゃぱりまん……」

「あー歌をなぞりたくてここでじゃぱりまん食べたの!ソロ曲出来たのってグレープが来たのより前だったから!」


「……僕は間違えてなかったのか。」

あれ?何で?さっきまで明るい笑顔だったのに急に少し暗くなった……

間違えてなかった?どういう事?

「ま、気にしない気にしない!それよりもっとみずべがいどして!」

「うん!」

そしてあんかけはまた明るい笑顔に戻った。


「ここにばすが停まってるんだー!」

「あ、この子ってもしかしてラッキービースト?」

「よく知ってるね~!」

「えへへ!」

その声にラッキービーストは反応した。そして……

「初メマシテ。僕ハラッキービーストダヨ。ヨロシクネ。」

喋った。って喋った!?

「やっぱりあんかけはヒトなんだね~」

(え?どゆこと……)

「ボスはヒトにしか喋らないんだよ!」

(そうだったのか……)

だから僕達には喋らなかったんだね。


あれ?この声どこかで……

グレ……ジャパ……行った……

フル……会えて……い……ぁ……

そんな記憶は外の世界にいた頃にもジャパリパークに馴染んだ頃にもない。

じゃあ一体……


「……プ!グレープ!」

(はっ!)

「どうしたの?また熱が……こっち向いて!」

フルルが前髪を上げている。まさか!?


コツン


「でもおでこ熱くないね!」

フルルのお陰で熱くなりそう……

あんかけはそっぽ向いてるし。


(フルル……ボスに聞きたい事があるからそれをあんかけに教えて聞いてもらって!)

「そうだったの?じゃあいいよ!」

(ラッキービーストと僕って前にどこかで会わなかったかって……)

それをフルルが翻訳してあんかけに伝え、あんかけがラッキービーストに聞く。

「ア、多分ソレ、仲間ジャナクテ自分デス。」

そうかそうかこのラッキービーストだったのか。……って!?

「僕ニモグレープ君ノ記事ガ入ッテキマシテ、天国ノ皆サンモ良イト言ッテマシタ。ナノデ、外ノ世界ノ風習的ナ物デ呼ビ寄セマシタ。『フルル』ト聞ケバ、名前ハ知ラナクテモ恋人ト同一人物ナノデ体ガソッチヲ選ブトイウワケデス!」

「コメント……」

「ふぇ?」

「あ、何でもないよ。」

「ア、モウスグ練習ノ時間デスヨ。」

「本当~?じゃあ帰らなきゃ~!」

「ラッキービーストありがとう!」

僕もありがとうをこめてお辞儀した。



あのラッキービーストにはもっとお礼をしないと。

だって、話せなかった恋人と話せるようになったんだから。



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