セツキの人気とサイの間違い対応
「ココリエ様? このような刻限に鍛練ですか? それともそこの反則急成長娘のお世話ですか? まあ、どちらにしてもあまりご無理なされませぬように」
「セツキも鍛練か?」
「ええ。最近、戦がないのはいいのですがそれが逆に不気味、と言いますか……」
それで有事に備えるのに槍を振っておく、というのが実にセツキらしい。謹厳実直でまじめで堅物で。その上、顔がいいものだから娘たちの間での人気は正直怖い。
セツキの隣に立つ、もしくは腹となれる女などいたら即殺されてしまいそうだ。
……と、以前城下町へ茶葉を買いにいっていたサイが超不機嫌で帰ってきて愚痴っていた。なんでもセツキに近づくな云々からサイの暴言癖が相手を逆撫でした臭い。
どうしてでしょう、その光景が瞼の裏にくっきりと浮かぶのは。普通の町娘相手に手をあげたりはないだろうが、言葉の暴力は存分に奮いそうだ。むしろ、暴言の鞭で打ちのめしてしまいそうな予感しかしなかった。
だから、子細をサイに訊ねた。
サイは機嫌急滑落という具合で買ってきた茶葉で一服をココリエのも淹れてあまりにしつこいので言語で滅多打ちにして再起不能一歩手前に仕留めた、と言っていた。
おいおい、と思ったココリエだが、これがケンゴクとかだったら言語を絶してお仕置きがありそう。それを思うと優しめに、穏便に解決した方、なのか?
なんて思い、それ以上は訊かなかったが、サイの不機嫌は朝から寝るまでまあ、正しく一日ずっと続いたと聞く。
寝る直前、ルィルシエに厠を訊きにいった時もめっちゃくちゃ不機嫌だったそうな。ちなみに、ルィルシエに「厠いっとくか?」は途中で起こされるのがいやだから。
思いだし笑いならぬ思いだし怖がり病(サイ命名)らしいので、たまにひとりで厠にいけないからついてきて、と乞われるそうだ。サイを選ぶ理由はもし、万が一なにかでても一捻りで始末してくれそうだから。……女扱いされているのか、それは。
まあ、そりゃ普通の女官ではルィルシエの言う幽霊とか悪霊とかは祓えそうにない。
いや、そいつを言えばサイも祓い清めるからはほど遠いが、多分、同じくくり。悪魔なら怪奇現象も「ほらー」なナニカもへっちゃら。……と、王女は言っていた。
サイには言っていない。言ったら言った者こそ殺される。どんなに遠まわしに濁して言ってもそれを簡潔に纏めてぶつけてくるので返答に困る。そして、困った時点で肯定したことになり、撲殺。うん。とっても簡単な未来予想。
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