優しい筈の怖いひと
ココリエはサイがどうすることもできないと知っていてわざと迫っている。今まで誰にも媚びたり願ったりしたことがないサイ。常に絶対強者だったサイはねだり方を知らない。どうしたらいいのかわからない。だからサイは混乱し、さらに取り乱す。
「お、お願、いし」
「ん?」
「やめて、くださ……」
羞恥と屈辱で赤く染まったサイの顔。隻眼を隠しているので感情が読めないが、きっとココリエを侮蔑している。だったら、見なくていい、と結論してココリエは笑う。
「ほう、なにを?」
「ぇ?」
「なにをやめてほしいのだ?」
「っ、ぁ、う、いろ、い、ろ」
「いろいろ、ね……伝わらんな、サイ」
伝わらない、と言ってココリエはサイの肌着を留めている中央の金具を外しはじめる。サイがいやがって身を捩ったが結果として半分手伝うことになってしまった。
サイの動きで留め金具が外れ、サイの豊かな胸の圧もあわさり金の留め具は残らず外れてサイの胸元ははだけ放題になった。真っ白だった。まるでまさに雪山。
素晴らしい形の丘陵がぷるんと揺れる。あと少し肌着をめくれば頂が見えそうなほどはだけているが、サイはココリエの下でまだ暴れている。南国の気温のせいで自分が今どういう格好になっているかわかっていない様子。
「すごくいい格好だ、サイ」
「? ……っ」
サイがいつまでも暴れているのでココリエは仕方なく一言感想を寄越してサイの現状を教えてやった。ココリエに教えられてサイはようやく自分の素肌に当たっている風に気づき、自分の格好に気づいて真っ赤になった。
真っ赤になり、耳まで染めているサイ。どうしたら体を隠せるか考えているようだが、ココリエは考えさせる余裕など与えてやらない。サイの薄桃に染まった耳朶に八重歯を立てた。こりっとして柔らかな中にしっかり弾力があってとてもいい噛み心地。
それ自体も発見だったが、なにより、サイがぶるっと震えたのが見えてココリエは視線をあげる。サイは唇を引き結んで悲鳴がでないように耐えていた。
「ここ、感じるのか?」
「し、らな」
「じゃあ、これは?」
優しく囁いてココリエはサイの耳孔に舌を差し込んだ。耳の中に直接響く濡れた音にサイは飛びあがるほど驚いたが口は結んだまま。惜しい。それだけ感想を抱いたココリエはサイの耳にさらに刺激を与える。ぬるぬる、ぬちゃ、と卑猥で生々しい水音がサイの鼓膜を犯していく。
「~~っ、く、ふぅ、ぃ、ぅ……」
サイは震えながら耐えていた。
しかし、とうとう唇が開いてココリエになんとか許してもらおうと音をだしかけたが、サイの唇をずっと狙っていたココリエはこれ幸運とサイの口を塞ぐ。
くぐもった抗議がサイの口の中でどこかに去っていく。何度目かの口づけ。熱くて甘い愛撫。すべてがはじめてで未経験のサイはもうどこからどこまでが自分の体かすらわからない。目隠しされているせいで余計に感覚が鋭敏になっているのが自覚できていた。
体が熱くて、熱くて、熱すぎて気持ちが悪くなってくる。まるで熱中症のように。与えられる熱のせいで頭が朦朧として意識が飛びそうになりかけては必死で耐える。
いつものココリエだったら別に隣で寝ても怖くもなんともないが、今のココリエはサイの知らないココリエ。こんなに怖くてこんなに乱暴な青年をサイは知らない。
「ふう、とても甘い、サイ」
「けほっ、こほ、はあ、はあ……」
「この程度で息切れとは珍しいな、サイ。だが、それなら、こっちはどうなっている?」
もはや抵抗らしい抵抗もできないサイの縛りあげた腕を押さえつけてココリエがサイの下半身に手を伸ばしかけたその時、ふたりがいる空間がぐにゃっと歪んだ。
ほんの少々胃がふわっとする気持ち悪さを味わったココリエは瞑っていた目を開け、さっとサイの体を胸にしっかり抱いた。だが、サイの体はぎゅっと固くなった。
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