死者に問う愚問
悲しい夢を見た。大切な者が死んで壊れていく夢。見たくもないのにずっと、見ていたい夢。
「レン、私、生きていてもいいのかな?」
つい、零してしまう泣き言。彼女にだけ零す言葉。
生きていてもいいのか、と問う私にあのコは、レンはずっと笑っている。なにを言っているの? と言わんばかりにあのコは笑い続ける。私などに、笑ってくれる。
悪魔の、私に。悪魔でしかない。そうでしかない、そんなふうにしか在れない私なのに……。
どうしてお前は笑ってくれる?
どうしてお前は私に恨みを吐かない?
恨んでもいいのに、文句などないのに。私のせいで、お前は死んでしまった。それなのに、どうして、恨んで憎んで怒って罵ってくれないの? ねえ、レン?
「レン、ごめんね、レン……私のせいだ」
「……――」
「お願いだから私を呪ってよ……レンっ」
「――」
「あんなものの愛なんて要らない。お前が今いてくれたらそれだけでいいっだから、だからぁ!」
言葉は徐々に絶叫になっていく。私は罪に潰されそうで重罪に、私は押し潰されそうだった。
妹を守れなかった。たったちっぽけなあんなゴミの愛情などを求めたが為に失ってしまった。
悔やんでも悔やみ切れない。
大切な者はそばに在って幸福なの。
失くしてしまったら絶望するの。
失ってからそんなことに気づいた。
バカだ、私。間抜けだ、底抜けの阿呆だ。
「お願い、お願い……お、願い……っ」
ひたすらに私は懇願する。レンが望まないことを望む私にレンは悲しそうに表情を曇らせる。
私がこんなことを願っていることを悲しんでいる。
でもね、レン? そうでもしないと壊れてしまいそうなのよ、私。積み重なった罪はいつか私に罰をくだす。断罪される。でも、私はまだ死ぬわけにはいかない。
「――、――。――……」
聞こえない。お前の声が聞こえない。聞きたいのに、まるで、許されないことであるように。
ただ、お前は辛そうにしている。なんだ? 私に幸せになってほしいのか? はは、許さない。そんなこと、私は絶対に許さない。私が幸福になる為にはお前が幸福でなければならない。お前は、お前こそが不幸だったのだから。だから、私だけが満たされるなどとありえないのだ。
なので、お願いです。幸福になってください。今度は悪魔の妹などという不幸をかぶらない場所で幸福になってください。私はひとり、罪で溺れて死ぬ、から……。
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