趣海坊天狗譚

作者 みりあむ

物語に出会うという奇跡

  • ★★★ Excellent!!!

本音をいえば、ちょっと、いやかなり愕然としてしまった。
末端とはいえ、物語を書く者だから。いかに自分が小手先で書いているか、いや別にいい加減に書いているわけでなく真面目なんだけど、だからこそ感じ入った、染み入った、そして恥じ入った、というべきか。けれど、それ以上に嬉しかったと思う。
怠け者の天狗、趣海坊。他の天狗に叱られ、お山に帰るためには人間を天狗にスカウトしろと突き付けられる。そして出会った医者の徳本、彼を立派な天狗にせんと、趣海坊は付き人となるが・・・・・・
柔らかな、軽妙な語り口調で民話や昔話の体裁をとっている。一方で資料や取材に裏打ちされた、当世の人々の生きようが率直に描かれている。
その上でゆっくり流れる物語の結末、趣海坊の言動、そして浅学にてあとがきでようよう知ったとある人物の正体に、泣けてしまった。ストレートな悲しみではなく、感情が昂ぶった時のそれ。
こういう物語に出会えるのは稀であり、奇跡であろう(実のところ、作者については前々から存じ上げていて、この奇跡の発現が遅くなったのは、私の怠慢なのだけれど)。
ので、せめてレビューを書かせてもらい、誰かにとっての奇跡の片棒を担がせてもらいたいと目論む。物語に出会うという奇跡を、貴方に。

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