第45話 知らなかった?

「ありがとな」


「何が?」


何に対しての感謝か、分かってるくせに。


「藤田くんのこと、教えてくれただろ。だから、止められた。守れた」


「ああ?別に大したことねえよ。知ってるのに言わないのはもうやめようかなって」


知ってるのに言わない、という言葉から思い出す、あの記憶。


それでもこいつは、「やめる」と言っている。厳密には「やめようかな」だけど。


夕日に照らされる金髪がさらに輝いている。


伝えることはもう伝えたけど、まだなんとなく、話していたい。


こいつとはよく、この通りで喋ってたっけ。そのノリで、リュウの家に行ったり僕の家に行ったり。


そんなことを思い出していると、リュウが口を開いた。


「にしても、サトシはすげえな、モテモテじゃん!」


またそれか。こいつは本当に僕の恋愛沙汰が大好きみたいだ。ムカつく。


「だから、藤田くんが僕のことを男として見てるわけないだろ」


「いやいや、あれは好きだろ〜、絶対。わかってないねえ〜、サトシくんは。でも、あれだな、彼女も、浮気相手も能力者って、面白すぎだろ!」


「浮気相手っていい方やめろ!」


あれ。


今なんて言った、こいつ。


『彼女も、浮気相手も能力者』


『浮気相手』っていう言い方はとてつもなく気に食わないが、藤田くんを指す言葉だ。



『彼女も』


つまり。


片岡さんが、能力者ってことか…。



「あれ、あの子が能力者ってこと、知らなかった?」


察しの良すぎるリュウが、僕の疑問点を的確に読み取る。

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