【2】
水槽の明かりだけがくっきりと浮かび上がる暗い館内を、水槽を眺めながら移動して行く。
「これもクラゲ?」
「ん?」
傘を下に向け、口腕が上で揺れている。
名前を見るとサカサクラゲと書かれていた。
薄いピンク色のサカサクラゲは、まるで海中に咲く花のようにも見える。
「ピンクに見えるけど、正確には褐色らしいよ。」
「へー。褐色藻とかいうのを住まわせて、栄養貰ってるんだ。ーーじゃあ色は藻の色ってことか。」
藻から栄養を得るだけで生きていけるのかと思ったら、栄養とは別に餌も必要らしい。
「こっちのカラージェリーフィッシュてヤツ、色がいろいろ。」
「ダジャレですか?」
「そんなつもりじゃなかった。」
カラージェリーフィッシュはコロッとした傘にカリフラワーっぽい口腕で、拍動が活発で元気な姿を見せている。
色も青や白、赤褐色等様々で楽しめる。
シロクラゲにアカクラゲ、カブトクラゲにハナガサクラゲを眺め、クラゲの最後はタコクラゲ。
「傘の白い部分はカルシウムが含まれてるみたいだよ。」
「へー。…模様がヒョウ柄っぽいのとかも。タコクラゲって水玉模様だけかと思ってた。ーーあのタコクラゲの模様、ハートっぽく見えない?」
「ホントだ、ハートぽく見える。ハートっぽい模様を見つけると、ちょっと気持ち上がる気がする。」
「ああ、なんかそれ分かるかも。ーーそろそろ昼飯にする?それとも触れ合ってから昼飯にする?」
「お昼食べてから。」
「じゃあレストラン行こう。」
遂に念願のレストランなのである。昼時から少しずれたのでそんなに混んでなかった。
近年クラゲが大量発生したため、厄介者をどうにかしようということになり、じゃあ食べよう的流れで、この水族館内レストランでクラゲ料理を出すようになったらしい。
そんなわけでクラゲを食べるため、水族館に来たのでしたとさ。
まずはレストラン一押しクラゲラーメンを食べることに。
三原君もクラゲラーメン。
ラーメンにトッピングされていた海老をくれた。
「ありがとう。」
「ん。」
「「いただきます」」
クラゲはトッピングされてるだけでなく、麺にも入っていた。
クラゲ麺はコシのしっかりしたツルツル麺だった。
ラーメン二杯と天丼、かき揚げ丼を食べ、あとちょっと食べたい気分なので刺身定食とクラゲの刺身を注文。クラゲの刺身は三原君も食べたいと言うので分けてあげた。
「結構デカめに切られてるね。」
「5センチくらいありそう。」
ポン酢と相性が良くて、美味しくいただけました。
お昼も食べたのでタッチプールへ移動する。いよいよまさぐる時が訪れたのだ。
興奮のあまり鼻息が荒くなりそうです。
「すばるさんや、何故俺をまさぐろうとしてるの?」
意気揚々とまさぐろうとした手を掴まれた。
「だって三原君が『後で触るでしょ?』と大胆に誘ってきたので。」
「そこだけピックアップされても。」
「昼食後にまさぐり合うと誓ったあの約束は嘘だったの?」
「誓ってないです。人目のあるとこでの過度の接触はお断りします。いつでも触れる俺じゃなくて、サメに触りなさい。」
「一刻も早く三原君をまさぐろうと、昼食を少なめにした私に誠心誠意謝ってほしい。」
「すみませんでした(棒)ほら、サメと触れ合おう、サメと。」
サメはサメ肌でした。
食後に三原君をまさぐるというビッグイベントが中止になり、心に深い傷を負った私は、サメとの触れ合い後、軽食の売店でストロベリーミックスソフトを買って貰った
「美味しい?」
「うん。」
「それは良かった。ーー俺のも食べる?」
「うん。」
三原君のチョコソフトも美味しい。
「私のも食べる?」
「ん。」
傷心の私はその後、ポテトやホットドッグ、ドーナツに玉蒟蒻等あれこれを買ってもらい傷を癒し、水族館を後にしたのであった。
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