37.だって男の子なんです≪三原≫


2棟並んだステーションビルと、隣接するように後方に建つビル3棟。


前後を繋ぐ通路や、後方真ん中と片方だけ繋がっている通路等、どこに出るか今一分かりづらい造りだ。



3棟の5階から上は居住区になっていて、住人の半数以上が他国人というのもあり、このビル5棟に入っている店は、いろんな国の店が軒を連ねている。



もとはステーションビルが1棟だけだったが新しく建てたり、横に、縦にと、継ぎ足し継ぎ足し建てていき、今の形になった。


入口を間違えると、目当ての店にたどり着けなかったり、ものすごく遠回りさせられたりと、かなり面倒な建物と言える。



入り組んだ通路、フロアを彩る雑多な店。意味は解らないが、響く陽気な言葉たち。一つ一つが異国感を漂わせ、5つのビルが架空の世界を作り出しているような、独特な空気。


迷路みたいな場所だから、多分、発見してない店もまだまだあると思うんだよね。


気持ちをふわふわさせたりワクワクさせたりしてくれるから、俺は此処が好きだ。


因みに接客時は、この国の言葉でしてくれてるので、ちゃんと解る。




今日はそんなお気に入りの場所でもある、学校の最寄り駅――とは言ってもバスで20分くらいかかるが、ステーションビルに最近オープンしたジェラートショップ目当てでやって来た。





目当ての店の内装は、赤と黒のオシャレな感じで、ジェラートの並んだケース――店員さんの後ろのガラスの棚には、これまたオシャレな感じに、カップやコーンの入った、模様の描かれた箱や、テイクアウト用の箱がディスプレーされている。



オープンしたてだからか、それとも店員さんの顔面偏差値のお陰なのか、店は大盛況だ。



女子がキャッキャしてるわ男子も鼻の下が伸びているわ。


店員さんを見れば色気のある美人だ。おまけに立派な2つのメロン――!?すばるさんや、な、なんで、このタイミングでこっち見るかな。



心を見透かされたような気がして、若干動揺してたのかもしれない。うっかり苦いジェラートを選んでしまった。あ~、失敗した。これは責められる気が。


もう一種類は、あげられるジェラートを選ぼう…。





「私が苦いの嫌いだって知ってるくせに、最低。これでは三原君のジェラートが食べられないじゃないですか。」



やっぱり責められた。


自分の食べたいものを選んで怒られるって理不尽。ーーいや、まぁ、純粋に食べたいもの選んだかと言えば動揺しての失敗だったりしますけど。


何だかもっともらしい理由を語ってきたけど、食べれないことに舌打ちしたの解ってるからね?明らかに食べれない物選んだことへの責めが理由だよね。



「シャイな私はイチャイチャしたいなどとハッキリ言えず、少額で多種類食べたいと誤魔化して言ったのに察してくれないなんて。結局、内心を赤裸々に語り、恥ずかしい願望を告げる羽目になった私に、E・狩場〈華麗なるマイマイの世界〉読書感想文を原稿用紙20枚にまとめて捧げて欲しい。読まないけど。」



読書感想文は読んでくれ。万が一俺が真に受けて書いてきたらどうすんの?原稿用紙20枚という大作を読んでもらえないとか泣くわ。勿論書かないけど。



でも、もし俺がホントに書いてきたら、どんな顔すんだろ?ーーいつもと変わらない顔で受け取り、なんの戸惑いもなくそのまま流れるような動作でゴミ箱行きだな。うん。




ジェラートを食べながら、ちょっと微妙そうだったから美味くないのかと思えば、チョイスミスのせいらしかった。


何か食べる時、すばるが割りとよくやるミスだ。




俺の予想では、イチゴが好きでイチゴが入ってるから注文して、注文した後に、他にもイチゴが入ってるのを発見して、『あ、イチゴ入ってる』ってなって注文する。


その時、既にイチゴ入ってるヤツ注文してるってことは記憶の彼方で、注文した後でもうイチゴのヤツ頼んでたって思い出すってところかな。



アホの子か。




「人は過ちを繰り返す生き物。」


「うん、まぁ、そうだけど。」




そう言えば、気になる水族館があるって言ってたな。


本屋に寄っても良いって言われたら、隣のビルの本屋に行こう。


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