其の3
報告書を出し、帰り支度をしていると、バイト仲間がやって来た。
「よぉ、ハーレム勇者。」
「ハーレム勇者ではないから。」
「北斗はハーレム勇者だと思ってたわ。」
「おいおい騙されんな。この前四天王やってた先輩が勇者側の偵察した時、北斗のハーレム修羅場が恐ろしかったって話してたぜ。」
「なんだ、見直しそうになって損した。」
「ハーレムは卒業しました。」
一人の男を皆で仲良く愛し、同じ男を愛す者同士いがみ合わず、セッ〇スだって順番で平等にするとか、魅力的な男は女が放っておかないから、ハーレムになるのは当然とか、そういうの許せる私って出来た女って自分に酔ってる女は小説の中にしかいない。
言葉を鵜呑みにし、有り余る性欲で女子とセッ〇スしまくり、リアルハーレムなど築いた日には、陰湿な苛めに、苛烈ないびり、聞くに耐えない罵詈雑言、挙げ句、攻撃魔法や物理等によるガチの
魔王討伐の前に勇者パーティー全滅という洒落にならないことに。
だらしない俺は頻繁に修羅場を体験してるが、でも、それは結局平和な世界の平和的修羅場で、異世界修羅場の恐ろしさに比べたら可愛いものだった。
「船賃てどれくらい?」
魔王手当で間に合うといいんだけど。
「は?何だよ急に。」
「とある島まで行きたいんだよね。」
「何で?」
「そこのチーズが美味いんだってさ。」
「へぇ。ーー何お前、暫く放っておいた彼女の機嫌でも取ろうってやつ?」
「彼女はいないよ。」
ついさっき別れたから。
「じゃあ自分で食いたいだけか。お前、そんなグルメな奴だった?」
「いや、…喜んだ顔が見たいっていうか…」
喜んでくれるかな?
チーズの為に
…久々に逢うと思うと、なんか緊張してきた。ーー俺のこと忘れてたらどうしよう。
「何々、北斗ってば好きな娘が!?どんな娘?顔は?性格は?どこで知り合ったの?」
「何でそんな食いついてくんの?」
興味持たれたらやだから教える訳ないだろ。
「ハーレム勇者の恋ばな聞きたい。」
「女子か。」
「好きな娘がいるってことは、今回向こうで恋人作ってねぇの?」
「作ったに決まってるだろ。」
「は?ーーいや、お前好きな娘いるんだよな?何で恋人作ってんの?」
「だって逢えなくて淋しいし、身代わりで心の穴を埋めないと淋しさで死んじゃうから。あと単に美少女で性欲発散したいから恋人は作るよ。」
「爽やかな笑顔で言ってること最低だなおい!」
「異世界なんて出される料理は大抵不味いし、不便だし仕事キツいし、若さゆえの有り余る性欲を美少女で発散するしか楽しみがないから仕方ないだろ。ーー王女とあんまりヤれなかったことだけが今回の心残りだわ。城にいるうちに口説いておけば良かった。そうしたらもっといっぱい王女とヤりまくれて楽しめたのに。」
「…お前の言う『好き』って告白ほど、価値のないものはないな。」
「俺、ヤるために作った恋人に『好きだ』とか言わないよ。好きとか愛してるとか、すごく特別で神聖な言葉だと思うから、そういう特別な言葉は特別な人にだけ贈りたいんだ。」
「後半は頷けるが、前半が最低過ぎて同意出来ねぇ!」
「つか、不満だらけなのに、何で普通のバイトしないんだよ。この世界にだって、いくらでも美少女いるだろが。」
「そうだね。この世界にも美少女はいるから、性欲処理要員はもちろん作ってるよ。でもここだと王族とヤれないからさ。あいつらのプライドの高い透かした面が愛欲に溺れる様を眺めるのが堪らないんだよ。ーーそれに、勇者はキツい分金がいいし、金のない俺でもいろいろ買ってあげられるかなって。」
「そこは『恋人は作ってるよ。』でいいだろ!?本音は隠そうよ!?何でこんな性欲しかないような奴がモテるんだよ!皆見る目無さすぎだろ!顔か?顔なのか?結局顔の良さが決め手なのか?」
「北斗のチ〇コがモゲますように。」
◆◆◆
こじんまりした部屋で、二人きりで、同じ酸素吸ってるとか幸せを感じる。ーー勇気を出して一緒に食べたいって言って良かった。
「北斗って彼女居たよね?」
「居ないよ。」
「あれ?居なかった?」
「…最近別れた。」
「ショックで引きこもってた?」
「いや、バイトが忙しくてサボッてただけ。そんなにショックでもなかったし。」
彼女と別れたくらいでショックとかもちろんない。
早く彼女欲しいなとは思うけど。
そんなことより、俺に彼女居るかどうか気にしてくれるの?ちょっとは俺のこと、す、好きとか?
お、落ち着け俺。単に会話的に聞いてみただけって可能性もある。ーーいや、寧ろそれが正解の可能性の方が大きい!勘違いしちゃ駄目だ!駄目だと思うのに、若干ソワソワした気分に。
チーズと一緒に渡したペットボトル早く飲まないかな。唾液混入飲料をゲットして、家で味わって楽しみたい。
絶対ゲットしたくて必死で薦めたのに、結局飲んでもらえなかった。
ああ…めっちゃ欲しかった…
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