『仮想本棚の一覧』のお手軽な代案


以前のコラムで、本棚に並んだ背表紙が、思いがけぬインスピレーションをもたらしてくれるということを書いた。


しかし...残念ながら、本棚は非常に大きな壁面積を消費する。

それだけの空間というか、壁面のある部屋を確保するにはコストがかかるわけであり、大量の本棚を置くには広い家に住める財力を必要とする。


つまり大変遺憾ながら、私個人としては、この問題は一生解決しない可能性が非常に高い。車を買えば駐車場が必要なように、服を買えば衣装箪笥が必要なように、本を買えば本棚が必要になるのは如何ともしがたい。


結果、紙の本に関して、蔵書すべてを一望できる物理的な書棚を持つことが、経済的限界(平たく言えば年収)によってかなわない私の、応急処置的な解決策はこうである。


1.基本的な蔵書はすべて、蔵書管理データベースに取り込む。(ちなみに私は蔵書管理専用のアプリケーションを使用しているが、それ自体はなくても構わない)


2.書籍の表紙画像もスキャンするか、写真に撮るか、(小さな声で)ネットから拾ってくるかして、蔵書データベースに取り込んでおく。


3.すべての蔵書の表紙画像をグラフィックファイルとしてフォルダーに書き出す。


4.全蔵書の表紙画像が入ったフォルダーを、仕事などに使用していない適当なマシンにコピーする。


5.そのフォルダーをスクリーンセーバー/スライドショウの画像フォルダーとして指定し、ランダム設定で常時回しておく。


こうすることで、蔵書の表紙画像が次々とランダム表示されていく環境が出来上がる。


そもそも蔵書管理を行わないのであればデータベースの類いを用意する必要はなく、表紙画像さえ用意すればそれでいい。


第一線で使用して_いない_マシンにする必要があるのは、この仕組みを常に目の付くところに表示させる「フォトフレーム」的な使い方にするためだ。

仕事などに常用しているマシンのスクリーンセーバとして動かすのでは、肝心の在席中に蔵書画像が表示されないために、求める役目を果たすことができない。


私の場合は、音楽再生専用の小型デスクトップに小さめの外付けモニターを接続して、それをデスク脇の目に付く場所に置いている。このマシンはオフにすると言うことが無いので、見る見ないに関わらず、24時間、スクリーンセーバー機能で蔵書の表紙画像がランダムに流れていくわけだ。

もし、余っているタブレットなどで同じことができるのであれば、そちらの方が手軽かもしれない。


もちろん、本当の意味での『一覧』ではないし、本物の書棚と違って、「あっ」と思ってもすぐにその本を手に取るというわけにはいかない。


それでも「ああ、そう言えばこんな本も持っていたな」と、ずっと昔に買って忘れていたような本も出てくる(と言うか、買った本を忘れなくなる)し、ちょっとしたインスピレーションがわいたりもするので、なかなか捨てた物でもないのだ。


このスクリーンセーバー上の、表紙の「出現頻度」は言うまでも無くフォルダーに登録した表紙画像の枚数(つまり蔵書の冊数)と、スクリーンセーバーのアルゴリズムに左右される。(大抵の場合、完全なランダムではない)


データが蔵書の表紙だけだと同じものが繰り返し出るので見飽きる、という場合はシンプルに、風景でもなんでも、画像を沢山フォルダーに放り込めば良い。

家族や友人の写真、それに旅先で撮った写真などと、蔵書がミックスされて表示されるのも良いものだと思う。


むしろ、自分のインスピレーション拡張に効果があると思える画像であれば、何を放り込んでおいたって良い。


ただし、所有していない本、もしくは読んだことの無い本をこのフォルダーに入れるのはお薦めできない。なぜなら、読んでいない本の表紙を見ても、そこからの連想の広がりが無いからだ。


ともかく、この方法であれば、電子書籍として購入した本でも、表紙の画像データさえ入手できれば、本棚に並べる代わりに、時折眺めることが可能になる。

電子書籍デベロッパー謹製の専用アプリを立ち上げないと、持っている本のタイトルすら確認できないという、非人道的な状況も少し改善されるし、紙の書籍と電子書籍を区別せず、とりまとめて眺めることもできるのがありがたい。


適当なPCさえ用意すれば、同じデータで自宅の書斎、リビング、オフィス、と異なる場所に同じライブラリーを表示しておくこともできる。つまり自宅の蔵書をオフィスでも眺めていられるわけだ。


これは逆に、物理書架には不可能な『拡張性』であり、大きなメリットだと思う。


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< 電子書籍のライブラリーをそのまま表示するわけでは無いので、蔵書に「人に見られると恥ずかしい本」が混じっていても、その表紙画像のファイルだけ消去して何食わぬ顔をしていれば良いのだから楽である。わざわざ本を前後二重に並べて奥に隠す必要も無い。>


< 電子ブックリーダーアプリケーションの標準的なモードが、このスクリーンセーバーになって、タッチパネルのワンクリックで中身が表示されるようなら、なお素晴らしい。ただし、表示内容はベンダーの垣根を越えて貰わないと片手落ちだ。>


< 昔は写真一枚あたりの表示秒数など、スクリーンセーバーの設定もかなり細かくできたのだが、最近はユーザーに細かな設定をさせない方向に進んでいるので使いにくくなっているのが残念だ。>

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