あんなに甘えてくるクセに

「ねぇ、テレビ点けて」


 ソファへ座って読書をしていると、

 ベッドの中から彼女の甘えた声。


「もうすぐ正午だけど。

 いい加減に起きたら?

 毎週、休みは寝てばかりだね」


「睡眠負債が貯まってるの。

 一日七時間は寝ないと、

 体に悪いんだって」


「あぁ。そうですか」


 覚えたばかりのその言葉を

 免罪符のように投げて寄越した。


「ついでに、お昼を作ってよ。

 ご飯が出来たら起こして」


「は?」


 ベッドを覗くと、

 僕から避難するように、

 布団の中へ

 すっぽり潜り込んでいる。


「まったく……」


 苦笑しながら、

 本を閉じて立ち上がった。


 確か、買い置きの

 パスタがあったはず。


 ベッドの中では

 あんなに甘えてくるクセに、

 普段は本当に素っ気ない。


 まるで、猫みたいだ。

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