八月の物語

花火


 闇夜へ打ち上がる花火玉。


 その勢いに全てを委ね、

 僕の罪を括り付けることが出来たなら。


「た〜まや〜」


 隣へ並び、花火を見上げる彼女。


 その声は夜空へと消え、

 引き替えに現れる大輪の華。


「綺麗」


 大気が震え、僕の魂を激しく揺らす。


 その衝撃は責め立てるように、

 次から次へと押し寄せる。


 全てを覆い隠そうと、

 つい手に力が入ってしまった。


 彼女はそれを勘違いして、

 繋いだ手から強い温もりが伝う。

 それが一層、僕を苦しめる。


 夜空を彩る華々は、

 この心を隅々まで浮かび上がらせた。


 周囲で起こる歓声は、

 こんな僕を嘲笑っているのだ。


 折り重なって乱れる、僕とあの子の影。

 美しい光の幻想は、

 醜い現実をまざまざと見せ付け、

 僕の心へ焼き付ける。

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