第386話 御飯が炊けるのを待ちながら

 結局、色々見たけれどアウトドア用品は何も買わなかった。

 もう少し色々考えましょうという結論だ。

 そのまま歩いて7分のスーパーに行って、亜里砂さん指定の色々を購入。


 何を作るのかはもう材料だけでわかった。

 牛肉薄切りから始まってネギ、白菜、しいたけ、焼き豆腐、春菊、卵。

 これはどう考えてもすき焼きだろう。

 最後にうどんまで追加した辺りがなかなかだ。


 帰ったら早速料理の準備。

 すき焼き鍋の代わりに大きいフライパンが出てきた。

 そしてリビングにこたつの台だけを持ってきて、こたつの上にベニア板を置き、その上にあのガソリンバーナーを置く。

 この辺は先生宅でやる時と似た感じだ。


「あ、そうだ。ちょいと小細工なのだ」

 亜里砂さんはそう言って椅子を持って部屋の中央へ行き、火災報知器に手をやる。

「この電池を抜いておかないと酷い事になるのだ」

 それは経験談なのだろうか。


 酒は買えないのでみりん、醤油、砂糖を用意。

 材料も切った後更に盛ってこたつの上置く。


「御飯は?」

「あと10分程度で炊けると思うのだ。炊けたらすき焼きを開始なのだ」

 それがなかなか待ち遠しい。


「そう言えば強アウトドア用品を見たけれど、やっぱり結構高かったね」

 彩香さんがその話題を持ち出す。


「確かになかなか高かったのですよ。あれだとなかなか手が出ないのです」

「そうですね。出来ればお年玉でザックを買いたかったのですけれど、ちょっと迷ってしまいます」

「その通りなのだ」


 僕も頷く。

 寝袋はともかくちゃんとした寝袋カバーが高い。

 並の寝袋より高い2万円台だ。

 でも先生はこのクラスが必要と言っていたしなあ。

 寝袋だけ取り敢えず購入しようかなと悩んでいた訳だ。


「先生が言うには春休みにバーゲンがあるらしいのだ。だから焦らずにじっくり待って買った方がいいらしいのだ」

「確かに下手に安物を買うよりその方が賢明なのですよ」

 うんうんと未亜さんが頷く。


「それでも出来ればザックは欲しかったのですけれど」

 美洋さんはザックが本当に欲しかったようだ。


「でも何か掘り出し物が無いか、後でネットを皆で探すのですよ」

「確かにそれもありなのだ」


 やっぱりいろいろ活動すると自分のものが欲しくなるよな。

 今は先生から色々借りているけれど。

 寝袋もカバーも雨具も借りっぱなしだし。

 そんな事を思っていたら、何かチャララーという音が鳴り響いたのが聞こえた。


「御飯が炊けたのだ」

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