第375話 二ノ塔まで到着

 樹氷というか雨氷というか。

 寒いならではの光景を楽しみながら歩く。

 だんだん周りが開けてきた。

 背後には大山、その右側には関東平野の一部が見える。

 30分位歩いてちょっと道が曲がって広くなったところで停止。


「さて、ここからはアイゼンを付けましょうか。もうすぐ風通しのいい稜線に出ますから」

 そんな訳でアイゼン装着。

 ただベルト方式はきっちり付けるのが難しい。


「付けたら念の為、足を動かしながら何歩か歩いて、また緩んでないか確認して下さい。バルト式はとにかく緩みやすいので念には念を入れて下さいね」


 数分掛けてしっかり全員で確認してから、また紅茶を飲んで歩き始める。

 ちょっと行くと坂が急になった。

 確かにここからはアイゼンがあった方が楽だ。

 急だし所々凍り付いているし。

 ピッケルも使って一歩ずつ確実に登る。


 後はかなり開けてきた。

 見た感じではもう後の大山より高い感じ。

 実際にはこっちの方が低いはずだけれど。


 左側に海が見えている。

「あの島みたいなのは江ノ島だよね」

「そうですね」


 ならその先は鎌倉とかうちの学校の方だな。

 あのあたりは自転車で走ったな。

 そんな事を考えながら登り切ったら二ノ塔の山頂だった。

 まだ雪が無い時に一度来たことがあるが、今回は雪景色。


「思った以上に雪が積もっていますね」

「でも相変わらずここからの見晴らしはいいのだ」 


 富士山までくっきり見える。

 そして海に反射した太陽が光っている。

 これから登る三ノ塔までの道もはっきり見えた。

 その先塔ノ岳まで山が続いているのだけれど、山の陰で見えない。


「そのベンチの雪が無かったらちょうどいいのですけれどね」

 20センチ以上の厚みで雪がのっかっている。


「さて、今日の目的地まであと一息ですよ」

 雪が無い時は確か20分かかるかどうかだったな。


「アイゼンバンドの緩みを確認しておけよ。すぐ緩むから」

 先輩に言われて確認。

 少し緩んでいたので締め付ける。


 今回歩き始めの少しだけ下り。

 ただ下りだとアイゼンのありがたさがよくわかる。

 登りは足の置き方とか色々考えられるけれど、下りはそれでも滑ることがある。

 でもアイゼンを付けていればその心配は無い。


 強いて言えばアイゼンの底に雪がくっつくのが問題かな。

 まあピッケルで時々叩いて落としてやればいいのだけれど。

 まあそれはそれで日常にない感覚で楽しいのだけれど。


「雪がある方が歩きやすい気がするのだ」

「今回はちょうどいい感じですね。適度に人が歩いて踏み固めている感じですし」

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