第369話 未亜さんも参入

『見ていて色々もどかしいからそろそろ決着をつけて欲しいのだ。悠は自分が彩香のことを好きだという事をいい加減認めるべきなのだ』


 もの凄い直球勝負な言葉が投げられてきた。

 ちょっと考えて返答する。


『確かにそうかもしれないけれどさ、でも彩香さんがどう思っているかは別だし、それを言う必要も無いだろ』

『その辺がまだるっこしいのだ。私から見ると思い切り両思いにしか見えないのだ』

『そりゃ亜里砂さんからはそう見えるかもしれないけれどさ』

 言った後気づく。

 亜里砂さんの見えるは外見とか行動とかの表層的な物だけでは無い。

 表層思考も見えるんだった。


『それに彩香さんの場合は僕1人というより皆と一緒にいたいという感じが強いんじゃないかな』

『その傾向も確かにあるのだ。補足しておくと彩香には家族がいないのだ。そのせいで疑似家族的な関係を求めているところも確かなのだ』


 そうだったのかと僕は思う。

 思い当たるところは色々ある。

 彩香さんから家族の話を一度も聞いた事が無いし、長期休暇でも実家に帰る様子は無いから。


『でも、それでも彩香にとって悠が特別なのは確かなのだ』

『それは表層思考を見た上で?』

『言動や表層思考やそれ以外を含んで、なのだ』


 いつになく強い口調の亜里砂さん。

 まあ音声ではないから口調と言っていいのかはわからないけれど。


『でも告白なんてのも不自然だし、それに無責任だろう。僕はまだ中学生だからいつまで一緒にいられるかもわからないし』


『悠は真面目に考えすぎるのだ。現在形で好きだという事で充分だと思うのだ』

 うーん。

 それはそれで無責任な気がやっぱりする。


『悠はそういう性格だからしょうがないのです』

 また違う声でない声が聞こえた。


『今度は未亜さん?』

『その通りなのです。怪しい会話をしているようだったので参戦してみるのです』

 おいおい。


『未亜は悠と彩香の事をどう思うのだ?』

『色々と思うところはあるのですが、まあ見守るしか無いのですよ』


 未亜さんの口調は淡々とした感じ。

 何かある種の諦めも入った感じがする。


『そりゃそうなのだ。未亜もある種被害者なのだ』

『被害者というのは言い過ぎなのですよ』

『腹が立つので被害者3人分のプリンの刑というのは本音だと思うのだ』


 あ、未亜さんが黙った。

 何か考えている様子だ。

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