第332話 上りの中間地点
30分くらい歩いたところで一度休憩。
運動量のせいか思ったより暑い。
下着とフリース1枚。しかも前を大分開けた状態でちょうどいい感じだ。
「取り敢えず熱い紅茶をどうぞ。雪山用なんで甘いですよ」
先生が大きい魔法瓶から紅茶を煎れて回してくれた。
「うーん、この甘さが身体に浸みるのだ」
「下では絶対こんなに甘いの作らないのです。でも山だとこの甘さが美味しいです」
彩香さんは大丈夫かな。
そう思って横目で観察。
うん、問題無さそうだ。
ザックの上に座って紅茶を飲んでいる。
「あと、靴の中が冷たかったりその他調子の悪い処はありませんか。特に冷えてきたのがわかったらすぐに言って下さいね。凍傷になると大変ですから。一応靴や靴下はちゃんとしているので大丈夫なはずなのですけれど」
「あと、行動食はちまちまとでいいから食べておけよ。去年もそう先輩が言っていたな。普通の登山以上にカロリー使うから、常時食べている状態でちょうどいいって」
なるほどと思って、僕もポケットに入れておいたミニチョコパンを一つ食べる。
うん、甘さは力だという感じがする。
いつもはあんパンの方が好み。
でも登山用にカロリーが高い方を選択して正解だった。
「それでは、身体が冷えるから出発しましょう」
全員が紅茶を飲んで、行動食を口にし終えたところで先生がそう宣言。
再び皆で歩き出す。
しばらく歩いて行くと、大分辺りが明るくなってきた。
上の空は真っ青。
そして木の枝が作り物のように白くなっている。
所々陽が差していて枝に雪がついているところで、美洋さんや彩香さん、亜里砂さんがとんと木をつついて枝から雪を落とす。
そのたびにキラキラ粉雪が舞うのを皆で見て、そのたびに綺麗だなと思って。
そんな感じで休憩から30分ちょっと歩いて、他から来る登山道と合流した。
僕らが着た方は『唐沢鉱泉』
もう一方下る道が『渋の湯入口』
そして上り側が『黒百合平』と書かれている。
「ここでちょうど半分というところですね。体調はどうですか」
「ちょっと足が重いけれど問題無いのだ」
「私も大丈夫、あの塔ノ岳のはしごの時よりは楽かな」
「あれはきつかったのだ。強制もも上げ特訓状態だったのだ」
彩香さんと亜里砂さんも元気そうだ。
ここでまた紅茶休憩。
なお行動食は歩きながらかじるのも有りだそうだ。
ちなみに先頭の川俣先輩がまさにそうで、チーカマを食べながら歩いている。
途中雪が深くてそこそこ滑りやすいところも出てきた。
でもアイゼン着用の号令は無い。
「こういう場所でもアイゼンなしの方がいいんですか」
「これくらいなら無い方が楽ですね」
先生はそう言うけれど本当かな。
ちょっと疑問。
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