第302話 文化祭の終わり

 そんな中途半端な幕切れを迎えたおかげで。

 翌日片付けで美洋さんと顔を合わせるのがちょっと色々恥ずかしかった。

 大分色々余分な事まで言ってしまったような気がするし。


 それでもまあ、片付けをサボる訳にもいかない。

 そんな訳で集合時間の朝9時の5分前、僕は準備室の扉を開ける。


「おはようございます」


「おはようございます」

 既に全員が揃っていた。

 勿論美洋さんも。


 美洋さんが僕に向かってちょっと頭を下げる。

「昨日はどうもすみませんでした。寮、間に合いました?」


「何とか」

 3分前というぎりぎりの時間だったけれど。


「こっちも何とかという感じで間に合ったのですよ」

 未亜さんがにやっと笑いつつそう教えてくれる。


「昨日、1年生で何かやっていたのか?」

 川俣先輩にそう聞かれて。


「軽く青春劇を演じていたのですよ」

 未亜さんがそんな返事をしする。


 そして先生が、

「文化祭の展示と実演、先生方にもなかなか評判が良かったですよ。上手く行けば研究奨励という事で活動費が少し貰えるかもしれません。そうすれば冬合宿が少し楽になりますね」

なんて教えてくれる。


「冬合宿ってどんな感じの予定なんですか」

 聞いてみる。


「本格的な雪山登山の雰囲気を味わって貰おうと思います。雪山と言っても危ない事は無いですから安心して下さいね」


「去年も行ったけれど、案外寒さは何とかなるもんだ。あと本気の雪山の風景は凄く綺麗だぞ。あれは確かに行ってみないとわからないな」

 先輩がそんな風に僕達の興味を焚き付けた。


「まあそれはそれとして、片付けを始めるか」

「そうですね」


 僕達は立ちあがって、片付けに入る。

 まずはパネルを外して床に下ろし。

 料理用のポーダブルガスを畳んで仕舞って。

 そしてテーブルカバー代わりのシーツを外してと。


「そのシーツはあとでまとめて洗って渡すから、各自の部屋で干してくれ」

「了解です」


「あとは残ったクッキーの味見かな」

「もうあまり残っていないですけれどね」


 取り敢えずパネルは台車で運んで外の物置へ。

 先輩が洗濯機にシーツを放り込んで来て。

 洗濯終わりを待ちながら準備室でホットプレートでクッキーを焼いて。

 そんな感じで僕達の文化祭は終わりを告げた。

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