第297話 状況整理して考えよう
「毒を盛られたたって」
とんでもない話が出てきた。
「植物由来の毒を置いてあったカレーに盛られたのです。幸い術で見れば毒入りなのはわかるので、食べずには済んだのです。犯人は術で確認出来たのですが、雅彦さんの意向であえて追及しないでいるのです」
そんな事もあったのか。
なかなかとんでもない世界だ。
「ただ、そんな里を維持させているのも間違いなく父なのです。事業をあえて拡大せず、里の中で動かせる範囲内でわざと調節したりもしているのです」
「事業失敗で離散寸前だった松原家と梅丘家を支援して再建させたのも、事実上雅彦さんなのですよ。家の面子があるので表だってはしていませんが、仕事を回すなり信金を通じて資金援助をしたり、実情は里の皆が知っているのです」
なかなか僕には理解しにくい世界だ。
ただわかるのは美洋さんの父、雅彦さんが飛び抜けて有能な事。
そして里を何とかして維持しようとしている事。
「そして私はあの里の、閉鎖的な空気が凄く嫌いなんです。里での私には常に、あの竹川家のという頭文字がついて回る。やっと中学で里から離れたところに来てもこんな感じなんです。
父がいるから今の私もいる訳なのです。けれど父がいなければ、もしくはここまで商売向きで無かったら、今頃は里そのものが無かったかもしれない。そう思うと色々複雑なのです」
雰囲気的にはわかったけれど、状況はなかなかややこしい。
何とか整理しようとしたけれども。
でもその前に気になる事を一つ聞いておこう。
「今は未亜さんが家にいないけれど、毒とかは大丈夫なの」
未亜さんは頷く。
「あれは私が先に発見したのですけれど、実際は美洋のお母さんも気づいたと思うのですよ。お母さんは術使いと言う程でもないですが、そこそこ自衛の術や延命術とかは使えますので」
そっちは心配いらない訳か。
さて、なら頭の中で状況整理だ。
里は美洋さんのお父さんのもたらした新しい商売ややり方を嫌っていつつも、それにすがっている。
そんな里を維持しているのも結果としては美洋さんのお父さんで。
そして美洋さんはそんな古い考えの里を嫌っている。
更に自分がまだ『美洋という女の子』よりも『竹川家の長女』とし見られることをいやがっている。
大雑把にまとめるとこんな感じか。
なら、里の事と美洋さん自身の事を分けて考えれば少しは簡単かな。
ちょっと考えて、流れを確認して。
そして僕は美洋さんに聞いて貰うために。
あえて未亜さんに対して聞いてみることにする。
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