第295話 ある意味予想通りの展開
「うーん、複雑な気分になります」
美洋さんはちょっと顔をしかめる。
「今まではそういう態度を見せた男の子には近づかないようにしていたのですけれど、ちょっと申し訳無かったでしょうか」
「そこで申し訳無いと思うのが多分美洋さんの品の良さというか育ちの良さなんだろうと思うな。でもその辺の好き嫌いは個人の感情でやっていい部分だと思うよ。もちろんクラスメイトとしての最低限の付き合いは別としてさ」
「そうですね、そうですよね」
うんうん、と美洋さんは頷いて。
ちょっと考えるように頭を傾けて。
そして僕の方を見る。
「それなら悠さんに質問してみて宜しいでしょうか」
えっ。
何だろう。
「いいよ」
そう答えておくけれど。
「さっきの話の続きです。他の人から見て、というのではなくて悠さんの目から見て悠さんの判断で見て。私って家柄抜きでも魅力的な女の子に見えるでしょうか」
何か微妙に危ない予感がしてきたぞ。
「勿論」
そこは迷わず答えるけれどさ。
「なら質問その2です。悠君から見ても私は魅力的な女の子に見えますか」
「勿論だよ」
大分危なくなってきたな。
「その3。それなら私を悠君の恋人にしてくれますか」
これは危険な質問だ。
こういう場合の上手い手のストックなど当然僕には無い。
なのでここは真っ正直に答えるべきだろう。
「僕は今のところまだ誰かが好きとか、誰かと一緒にずっといたいというのがまだ無いかな、というのが本当のところだからさ。だから恋人って言われるとちょっと考えてしまうわけで」
あ、助け船がちらりと見えたような。
正確に言うと助け船と言うより狐火だけれども。
そして僕の予想では、きっとそれだけじゃ無いだろう。
だからちょっとばかり僕は安心すると共に。
今の現状の本音を僕が思うとおりの言葉で言ってみる。
「例えば僕は割と彩香さんと一緒にいることが多い。でも彩香さんが恋人かというとそれもまた違うと思う。彩香さんも充分魅力的な女の子だけれどね。
美洋さんだって同じ。充分に魅力的だけれどもまだ恋人という段階じゃないと思う。その辺は未亜さんとか亜里砂さんも同じ。
という事で。そこで覗き見している多分3人、そろそろ出てきて欲しいな」
「えっ」
美洋さんは気づいていなかった模様。
「美洋さんの調子がおかしいとか心配な感じだとかで様子を見ていたんだろ。取り敢えず未亜は狐火が見えたから確定。あと間違いなく亜里砂もそこにいるだろ、性格的に。2人がいれば当然彩香さんもいるだろうし。別にのぞきを怒ろうとか思っていないから素直に出てきなさい」
「はーい、なのだ」
わざとらしく亜里砂さんが返事をして。
予想通りの3人が出てきた。
まったく。
油断も隙もありゃしないが今回は助かった。
これ以上話が面倒になる前にこれで切り上げられるから。
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