第270話 何となくコツがわかってきました

 でもそんなにハゼがいる訳でも無いようで。

 2匹目は結構時間がかかった。


 エサ付けて投げて、ひっぱって確認して。

 さらに確認して、エサがついているか上げてみて。

 それを何度か繰り返して、大体10分後。

 やはり彩香さんが釣り上げた。


「何か川のあの流れのあるところと緩やかなとこの境目、あの辺で釣れたような気がする」


 そう言うので僕も同じようなところに投げてみる。

 ちょっと遠目に着水したのでちょっと引いて場所をあわせて。

 そのまま待ってみるとふいっと糸が動いた気がした。

 巻いてみるとやっぱりかかっている。


「本当だ。あの段というか斜めになっているところがポイントかな」


 そんな訳で2人で場所を少しずつ移動しながら釣っていく。

 自転車にまたがりながら、川方向に竿を出してちょい投げて。

 その繰り返しで移動していたら、いつの間にか対岸にさっきの場所が見えた。

 すでに先輩も亜里砂さんも移動していないけれど。


「どうする?次に釣れたら先輩に様子見がてらハゼを預けに行こうか。氷も大分とけているし」

「そうだね」


 そんな訳で。次に彩香さんが釣ったのを機に僕も仕掛けを巻いて。

 リールを巻きながら竿を短くして、最後は針を自転車のカゴに引っかけてリールを巻いて動かないようにして。

 そして2人で先輩捜しに出かける。


 ここから上流方向は道と川が少し離れるから、行くなら下流方向かな。

 そう思って自転車を下流方向へ。

 朝来た道を渡って、下流方向に少し進んだ辺りで先輩と亜里砂さんを発見した。


「取り敢えず氷の補給と、ハゼをしまいに来ました」


「どうだ、調子は」


「僕が4匹、彩香さんが6匹ですね」


「極めて順調だな」

 ちなみに先輩の持っていたクーラーボックスには、ぎっしりとハゼが入っていた。


「こっちも同じくらいかな。亜里砂が頑張っているしさ」

 そんな訳で新しい氷と、念の為餌の貝柱を2人でもう1個もらって下流へ。


 川を下って国道の橋まで来た処で。

 見覚えある2人が手を振っているのが見えた。

 どうやら国道の橋から川のすぐ近くまで降りる階段があるようだ。

 なので彩香さんと2人で行ってみる。


「ここはお勧めなのですよ」

 未亜さんが呼んでいた。


「自転車はどうしたんですか」

「ちょっと重いけれど階段の下に下ろしたのです」

 というので真似して自転車を下ろして。

 彩香さんにはちょっと重そうだったので下ろすのを手伝って。


「ハゼだけでは無く、色々面白いのも釣れるのですよ」

 見ると小さいしましまの魚とか、前にサッパと教わった奴とか色々タッパーに詰まっている。


「氷を分けようか。そろそろ溶けきるでしょ、これ」

「ありがたいのです。でもそろそろクーラーボックスに入れる方がいいのです」


 確かにそんな感じだ。


「私が2人分のタッパーを持っていくので、美洋が釣ったりエサを採られた場合は分けて欲しいのです」


「わかった。先輩はこの先対岸の上流方向」


「ありがとうなのです。では行ってくるのです」

 未亜さんは自転車を押して階段を登って、そのまま走って行った。

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