第267話 ちょっとだけハイキング

 午後はそれぞれ加工食品の製造。

 自分で気に入った素材を加工する作業だ。

 採った後まだ残っている素材は、銀杏、くるみ、ドングリ2種、小豆という感じ。

 うち小豆は残り少ない。


 そんな訳で取り敢えず始めたのがドングリ加工作業。

 手始めとしてマテバシイを煎って殻を剥いて豆状態にする作業をやっている。

 それでもずっと同じ作業をしていると飽きてくるものだ。

 それでも何とか中ボール1個分くらいのマテバシイを剥き終えたところで。


「ちまちまする作業は飽きたのだ。放牧されたいのだ」

と亜里砂さんが言い始める。


「そうですね。折角天気がいいですし、軽く歩いてきましょうか」

 そんな訳で急遽予定を変更。

 各自水入りペットボトル2本と雨具をザックに入れて、車で出発だ。

 車は10分ちょっと走った広場みたいな所で止まる。


「ここから三浦富士まで、20分ちょっとかな。そんな感じですからのんびり行きましょう」


 そんな訳で小さな鳥居をくぐって歩き出す。

 細い舗装道路の坂を登りながら。


「この先は見晴らしはどんな感じなのかな」

「上手く行けば富士山とか相模湾方面が見えるんですけれどね」

 なんて話して。


 そして、警察犬訓練所と書いたところからいよいよ山道へ。

「犬さんはいなかったのだ」


「訓練はお休み時間なんでしょうかね」


「この木はマテバシイですか」


「そうですね。拾いながら登ってもいいですよ。頂上も近いですから」

 そんな訳でドングリ採取をしながらのんびり登って。


 少し坂がきつくなったかなと思うともう頂上だった。

 岩がところどころ地表面に出ている感じの山頂で、石のほこら2つがある。

 回りは木がまばらでそこそこ眺望がいい。


「簡単に登れる割には結構遠くが見えますね」

「でも残念ながら富士山方向は曇っているのです」

 なんて言いながら一休み。


「このまま尾根沿いに向こうの山まで行っても1時間くらいですけれどね。もう午後ですし今日はここまでにしましょう」


 そんな訳で。

 帰りは20分かからずに車の場所へ。

 そして。


「先生すみません。帰り、ホタテの貝柱を買いたいんでどこかスーパー寄ってくれませんか。品質は問わずで少なくてもいいので安い店で」

 川俣先輩がそんな事を言う。


「それは明日用ですね」

「ええ」


「ならスーパーに寄りますね。あとついでに晩ご飯のおかず、何かお肉類を買い出しましょうか」 

 という訳でスーパーへ。


「ホタテの貝柱、明日何に使うんですか」

「それは明日のお楽しみって奴だな」


 何に使うのだろう。

 僕にはまだわからない。

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