第239話 それはなかなか困りものです

 午前8時55分。

 僕が寮の前で待っていると。

 女性陣全員が集団でやってきた。


「それで結局電車に乗ったのだ。おやつ代を考えれば素直に電車に乗った方が安かったのだ」

 夏休みの夜の遠足の話をしているようだ。


 そして。

「おはようなのだ。今日は指導宜しくなのだ」

 亜里砂さんが僕を見つけて挨拶してきた。


「おはよう、こっちも宜しく」


「それにしても夜の遠足とお泊まり会ですか。なかなか面白そうなのですよ」

「言ってくれれば無理矢理帰ってきて参加したのに」

 美洋さんがそんな事を言っている。


「夜の散歩は日程的に無理だったのですよ。でも後の方はその気になれば参加出来たような気がするのです」

 未亜さんまで。


「でも寝る場所がそんなにないだろ」

「寝袋を持っていけば大丈夫ですよね」

 おいおい美洋さん、本気かよ。


「私の方はいつでもウェルカムなのだ。ただ布団の数が無いので4人目からは寝袋必須なのだ」

「なら9月末の学期末休みを利用すれば、縦浜ショッピング巡りが出来ますね」

 美洋さん、間違いなく本気だ。


「まあそれはそれとして。とりあえず今日はお勉強会なのです。なお昼食は野遊び部の先輩が御馳走してくれるそうなのです」


「メニューは何なのだ?」

「その時のお楽しみ、と先輩は言っていたのです。それで教科は何を中心にやるのですか」


「苦手なのは数学と英語なのだ」

「了解なのです。美洋は?」

「私も数学です」

「ならちょうどいいのです」


 そんな話をしながら図書館へ行き、受付で学生証を見せて、

「2回の会議室、5人で勉強出来る大きさの部屋をお借りしたいのですけれど」

と尋ねる。


「それでは207号室を使って下さい」

と鍵を渡され2階へ。


 川俣先輩に部屋番号をSNSメッセージで連絡して、そして2階に行って部屋へ。

 思ったよりも広くてちゃんとした部屋だ。

 取り敢えず長テーブル4つをまとめて1つの大きいテーブルにして。

 そして5人で適当に座る。


「さて、最初は何から始めようか」


「一番苦手なのが数学なのですけれど、実は何処がわからないかが今一つわかっていないんです」

 美洋さんがそんな事を言う。


「あ、それはわかるのだ。私も何となくわかるつもりなのだけれど、何故かテストではわからないところが出てしまうのだ」

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